マラリア原虫は蚊の体内で発育し、哺乳類への感染型であるスポロゾイトとなる。スポロゾイトは自律的に蚊の唾液腺に侵入し、吸血とともに哺乳類体内に打ち込まれ、血流に乗って肝臓へと到達、肝類洞壁を通過して肝細胞に感染する。本研究はスポロゾイトが、全く異なる種類の細胞に侵入・感染するためのメカニズムを明らかにするための足がかりとして、分泌型タンパク質RON4の各ステージにおける作用機序を明らかにすることを目的とした。 前年度はスポロゾイトから肝内原虫期におけるRON4発現パターンを明らかにし、2021年度までにスポロゾイトの運動性に関与していることを明らかにしたRON 4が、滑走運動中に虫体外へ分泌されていることを確認した。 RON4をスポロゾイト時期特異的に発現抑制したスポロゾイトでは肝細胞への感染が抑制される。虫体外に分泌されたRON4が肝細胞への感染に機能するかを調べるために、RON4抗原接種により免疫したウサギの血清から精製した、抗RON4抗体処理により、スポロゾイトの肝細胞感染が抑制されるかを検討した。その結果、抗RON4抗体群ではコントロール抗体処理群と比較して、スポロゾイトの肝細胞への感染が三分の一程度まで抑制されていることがわかった。また、この感染抑制効果は抗RON4抗体濃度依存的であった。これらのことから、RON4は肝細胞への感染時に虫体外へ分泌され、機能していることが示唆された。これまでに明らかにした研究成果をまとめ、投稿した論文がmSphereに受理された。
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