研究課題/領域番号 |
20K16240
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
阿松 翔 金沢大学, 医学系, 助教 (90827346)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボツリヌス毒素複合体 / ヘマグルチニン / 細胞外輸送経路 / アクチンフロー / カドヘリンフロー |
研究実績の概要 |
本研究は、ボツリヌス毒素複合体のヘマグルチニン(HA)が上皮細胞間バリアを破壊する作用機構を細胞生物学的手法を用いて詳細に解析することを目的とする。HAは、E-カドヘリンに結合することによって細胞間接着機能を阻害し、腸管上皮の細胞間バリアを破壊することが知られている。申請者らはこれまでに、蛍光免疫染色法およびパルス・チェイス法を用いた解析より、HAは底部細胞表面に結合した後、側部細胞表面へと移行し、細胞接着を形成するE-カドヘリンに結合することを見出した。HAの機能変異体を用いた解析の結果、HAはE-カドヘリン結合活性に依存して、底部細胞表面から側部細胞表面へ移行した。この細胞外輸送経路を同定するために阻害剤スクリーニングを行った結果、ミオシンII阻害剤ブレビスタチンはHAのバリア破壊活性を抑制した。カドヘリンは細胞内領域ではカテニン複合体を介してアクチン骨格に結合しており、ミオシンによって駆動されるアクチン・フローを利用して細胞底部から側部のアドへレンス・ジャンクション(AJs)へと移行すること(カドヘリン・フロー)が知られている。本研究において、ミオシンII阻害剤がHAのバリア破壊活性を抑制したことから、HAはカドヘリン・フローを利用して底部細胞表面から側部細胞表面へ移行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは先行研究(Amatsu, et al. Micobiol Immunol 2018)において、HAは細胞間隙のE-カドヘリンに直接結合するのではなく、はじめに細胞の底部表面に結合した後、側部表面へ移行することを見出した。この結果から申請者は、HAのバリア破壊活性のメカニズムにおいて、HAをAJsへ運ぶ細胞外輸送経路が存在すると仮説を立てた。HAの側部細胞表面への移行がE-カドヘリン結合活性に依存することから、カドヘリン・フローに着目した。カドヘリン・フローを駆動するミオシンIIの阻害剤ブレビスタチンがHAのバリア破壊活性を抑制したことから、上記の仮説が支持された。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に、HAのバリア破壊活性阻害剤としてミオシンII阻害剤ブレビスタチンを同定した。2年目では、蛍光免疫染色法およびパルス・チェイス法を用いて、ブレビスタチン添加時におけるHAの細胞外輸送を解析する。ブレビスタチンがHAの細胞外輸送を阻害している場合は、HAの側部細胞表面への移行が抑制されることが予想される。HAの細胞外輸送におけるカドヘリン・フローの関与をより詳細に検証するために、他のミオシンII阻害剤や他の関連分子に対する阻害剤を検討する。
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