研究課題/領域番号 |
20K16243
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 隆司 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20845200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 百日咳菌 / 生体イメージング / 気管支敗血症菌 |
研究実績の概要 |
ヒトに感染し特徴的な咳発作を引き起こす百日咳菌(Bordetella pertussis)は、これまでに多様な病原因子が同定されている。しかし、病原因子を単独で欠損させても、動物体内における定着性や増殖性への影響は限定的である。よって、百日咳菌の感染過程を明らかにするためには、複数の病原因子を欠損させた株を作製し、その病原性を評価する必要がある。この観点から本年度は、(1)百日咳菌の類縁菌である気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)の多重病原遺伝子欠損株の作製とその評価、および(2)感染動物内における菌の定着数を評価するための生体イメージング手法の構築を試みた。 (1)についてはまず、百日咳菌と共通する病原因子を複数欠損させた気管支敗血症菌を作製し、自然宿主であるラットに感染させ、気管における定着菌数を従来法で評価した。その結果、病原因子とされる毒素等を複数欠損させても定着菌数の減少は観察されなかった。一方で、定着因子とされる遺伝子を欠損させた株においては、気管における菌数が顕著に減少した。この結果は、気管支敗血症菌が生体内において定着し増殖するためには、一部の病原因子は必須ではない可能性を示唆している。 (2)については、近年開発された人工基質Akalumineと人工酵素Akalucを用いた生物発光システム(AkaBLI)を用いた解析手法の構築を行った。まずAkalucをコードする遺伝子を気管支敗血症菌に導入することで、Akalumine存在下で発光する菌を作製した。次に、作製した菌株をラットに感染させ、経時的に菌の発光を観察した。その結果、少なくとも感染から2週間以内においては、ラットの気道に定着している菌を可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画どおり、遺伝子欠損株とその評価、および生体イメージング手法の構築を行うことができた。しかし新型コロナウイルス感染症の蔓延により、研究の実施が困難な期間が生じたため、構築した生体イメージング手法を用いて欠損株の評価を行うまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
生体イメージングシステムを用いて気管支敗血症菌感染の評価を行う手法を構築できた。また、遺伝子欠損株の作製についても予定通り進んでいる。今後は、欠損株の生体内における動態の評価を、構築した生体イメージングシステムを用いて行う。また、得られた知見を百日咳菌に外挿するため、百日咳菌においても変異株を作製し、in vitroおよびin vivoの実験系により、各遺伝子の機能を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症の影響により、研究の実施が困難な期間があり、想定よりも進行が遅延しているため。 (使用計画)次年度は、遺伝子欠損株の評価を行う予定であるため、残額については主に、生体イメージングのに使用する実験動物と試薬の購入に充当する。その後は従来の計画通りに、各遺伝子の機能解析を行い、残額と併せた予算を消費する予定である。
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