研究課題/領域番号 |
20K16247
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
畑中 律敏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (20803745)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Campylobacter |
研究実績の概要 |
Campylobacter属菌において病原因子の1つと考えられている細胞膨化致死毒素(CDT)は、C. jejuni, C. coliにおいてはそれぞれ1種類のみのCDTをコードするcdt遺伝子が保有されている。一方で、C. fetusでは全ゲノム解析より本菌種が3種類のcdt遺伝子を保有していることが明らかとなっている。本研究課題ではC. fetusの病原性における各CDTの役割、複数のCDTを産生する意義を明らかにすることを目的としている。 令和2年度は主にCampylobacter fetusの野生株のCDTの産生性および、供試菌株のcdt遺伝子の保有状況をスクリーニングするための実験を行った。C. fetusの野生株の細胞膨化致死毒素の産生性については、保有している約160株のC. fetusより臨床由来株2株とウシ由来の8株計10株について細胞膨化致死毒素の産生性を確認した。血液寒天にて培養した菌株を超音波にて破砕し、遠心上清を粗毒素液とし、HeLa細胞に対する細胞毒性を確認した。供試した10株全ての粗毒素液はHeLa細胞に対し細胞膨化作用を示した。HeLa細胞に対する毒素活性は、コントロールとして用いたC. jejuni菌株と同等の力価を示した。以上のことより、C. fetusにおいてもC. jejuni同様に野生株はCDTを産生していることが示唆された。 次に、保有している約160株のC. fetusにおけるC. fetusが保有する3種類のcdt遺伝子の分布状況を確認するためにC. fetus NTCT10842株より3種類のcdt遺伝子をそれぞれプラスミドにクローニングし大腸菌へと導入することで、コロニーハイブリダイゼーション用のコントロール菌株を作製し、現在実験の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度はCovid-19の影響によって、本研究活動以外の業務が増加してしまったため、本年度に計画していた研究を全て行うことはできなかったが、本研究を遂行するために重要である、野生株が生物活性のあるCDTを産生していることを確認することができた。 本年度計画していたC. fetusの野生株のCDTの産生状況の確認については計画上ではHeLa細胞を含む3種類の細胞を使用して検証を行う予定であったが、用いた全ての菌株の粗毒素液がHeLa細胞に対しCDTの特徴的な細胞毒性である細胞膨化を引き起こした。そのため、野生株がCDTを産生していることを確認することができ、他の2種類の細胞に対する毒性の評価については、来年度の各cdt遺伝子がコードするCDTの生物活性を検証する際に共に行うこととした。 また、C. fetusが保有する3種類のcdt遺伝子の分布状況の調査に関しては、コロニーハイブリダイゼーションを開始するための準備については終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度に終了できなかった1.「cdt遺伝子の保有状況および配列の存性の検証」を速やかに遂行しさらに当初計画していたように、2.C. fetusのスクリーニング法の構築および3.各cdt遺伝子がコードするCDTの生物活性の検証および比較を行っていく。以上の3項目について 1. 検証のためのコロニーハイブリダイゼーションを行う準備はできているため、放射性同位体を購入し速やかに研究計画を遂行する。 2: 1)で保有状況を確認した菌株より3種類のcdt遺伝子を保有している菌株それぞれ10菌株を選択し、各cdt遺伝子の全配列をシークエンサーを用いて決定し、各遺伝子配列の保存性について検証を行う。さらに保存されている配列に対しPrimerを設計することでMultiplex PCRを構築する。 3: コロニーハイブリダイゼーションのコントロールとして作製した各cdt遺伝子を組み込んだプラスミドをタンパク質発現用の大腸菌に導入し、組換えタンパク質として各CDTを作製し、培養細胞に対する細胞毒性を評価することで、各cdt遺伝子がコードするCDTが生物活性を有するかを明らかとしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、Covid-19感染症の蔓延による影響で当初計画していた研究を遂行することができなかったため、次年度使用額が生じた。令和2年度に遂行できなかった研究は次年度に遂行する準備はできているため、順次研究計画を進め使用させて頂く。
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