研究課題/領域番号 |
20K16248
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
須藤 直樹 杏林大学, 医学部, 講師 (50736105)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / 小分子RNA / 転写後制御 / ler / LEE |
研究実績の概要 |
本研究課題は腸管出血性大腸菌(EHEC)の宿主細胞接着の各段階における、病原性遺伝子群LEEの転写調節因子Lerの転写後制御を担う小分子RNA(以下、 sRNA)の同定とその役割の解明を試みるものである。2022年度は、(A)昨年度に同定したler mRNAに結合する2つのsRNA(以下、X sRNA、及びY sRNAとする。)の機能解析と、(B)宿主細胞接着の各段階におけるのトランスクリプトームの解析をおこなった。 (A) X、またはY sRNAを過剰発現させた株ではlerの発現量が減少し、さらにLerが制御するLEEの発現量も減少した。さらに、同じ株を用いて宿主細胞への接着性を解析した結果、接着性の低下も見られた。これらの結果はXとYがlerの発現抑制を介して、宿主細胞への接着を抑制する因子であることを示す。加えて、X sRNAについてはler mRNAとの塩基対形成領域を変異解析から同定し、さらにX sRNAの発現が低栄養培地で上昇することを明らかにした。 (B) EHECはHeLa細胞と共に培養すると、概ね接着後4時間で細胞表面にマイクロコロニーの形成が始まり、接着後7時間で細胞表面の大部分を覆う。この宿主感染ステージに着目しHeLa細胞への接着後4時間、及び7時間におけるHeLa細胞に接着したEHEC、または非接着のEHECのトランスクリプトームを取得した。HeLa細胞に非接着と接着のEHECのトランスクリプトームを主成分分析で解析したところ、有意に遺伝子発現パターンが異なること、LEEの発現が接着EHECで上昇していることを明らかにした。またsRNAの発現に関して解析した結果、X sRNAは非接着より接着で、また4時間培養より7時間培養で発現が上昇することがわかった。この結果はEHECの宿主感染ステージに応じたsRNAの発現変動をとらえた最初の例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う研究活動の制限や大学業務の増加が生じたことで、 当初、2021年度内に行うはずであった研究課題を2022年度に繰り下げて実施した。 また所属研究機関の異動により、異動に関わる諸手続きや研究環境の構築、研究活動以外の職務の増加等の環境変化により、当初の想定よりも研究時間を確保できなかったため、期間延長の手続きをし、当初2021年度に行う予定であった計画を2023年度も引き続き行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、X sRNA、Y sRNAの発現条件、制御因子の同定を行うことでler抑制の生物学敵意義を理解し、加えてY sRNAに関してはler抑制の制御メカニズムを遺伝学的、生化学的解析から解明する。また2022年度に行った宿主細胞接着の各段階におけるトランスクリプトームの解析を進め、培養細胞への接着、非接着や培養時間により発現が変動するsRNAや病原性遺伝子群を同定し、その相関からEHECの感染過程で重要な働きをするsRNAを推測し、EHECの宿主細胞接着におけるsRNAの役割を明らかにする。これらの内容を2023年度内に学会発表を行い、学術雑誌(Molecular Microbiology)への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症の蔓延により、参加を予定していた学会の開催中止やオンライン開催への変更があったため旅費が生じなかった。また、所属研究機関の異動により当初の予定通りに研究を遂行できず、論文投稿ができていないため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)研究の総括として論文の校閲費、投稿費として使用予定である。
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