研究課題
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症 (CDI) は、ディフィシル菌が引き起こす難治性下痢症・腸炎で、世界的に罹患率および死亡率の高い疾患である。本感染症制御には、ディフィシル菌の殺菌法の確立が喫緊である。本殺菌法の確立へ展開していく中で、まずはディフィシル菌の細胞壁構造を十分に理解することが重要となる。細胞壁構造を解析するためには、主な構成成分であるペプチドグリカン (PG) を完全に分解し、その産物を分析する必要がある。しかし、従来法で使用するリゾチーム処理では、ディフィシル菌PGが殆ど分解できない。そこで、我々は、バクテリオファージ (ファージ) の特性に着目した。ファージは、自己の溶菌酵素により宿主となる細菌を分解する活性を示す。本溶菌活性を利用することにより、様々な細胞壁分解物を得る方法を考案した。本研究課題では、これまでの研究から独自に見出したファージ由来溶菌酵素を用いて、ディフィシル菌の細胞壁構造を解明する。ディフィシル菌の細胞壁PGの構造を解析するため、その精製の検討を行った。培養したディフィシル菌を集菌し、経時的に超音波処理を行ったところ、菌体の十分な破砕には、30分間の処理が必要であった。本破砕物をSDS処理およびpronase E処理により、タンパクを分解・除去した。次に、トリクロロ酢酸処理により、テイコ酸などの多糖類を除き、有機溶媒により脂質成分を除去することで細胞壁PGを精製した。精製PGにディフィシル菌ファージの2種類の溶菌酵素を作用させたところ、解析に十分な分解性を示した。現在、液体クロマトグラフィー/質量分析機(LC/MS)を用いてその分解産物の解析を行っている。
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Anaerobe
巻: 73 ページ: -
10.1016/j.anaerobe.2021.102502