研究課題/領域番号 |
20K16252
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
菱沼 知美 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助手 (90468570)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルバペネム耐性緑膿菌 / タンデムリピート / VIM型カルバペネマーゼ / プラスミド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の医療施設で分離されたMDRP臨床分離株の分子疫学解析を通して、カルバペネマーゼの進化様式を解明することである。申請者は昨年度までに、日本の医療施設でVIM型カルバペネマーゼ産生MDRPの分離率が上昇し、特定の地域ではプラスミド由来のVIM遺伝子が短期間で変異を繰り返し拡大しつつあることを明らかにした。 本年度は、2021年度に同定したプラスミド上にVIM-24遺伝子をタンデムリピートに保有するカルバペネム耐性緑膿菌の細菌学的特性を解析した。まず、緑膿菌PAO1へのプラスミドの接合伝達試験を実施した。全てのプラスミドはフィルター接合によってPAO1へ伝達された。次に、シャトルベクターpUCP19に1コピーVIM-24およびタンデムリピートVIM-24をクローニングし、それぞれをPAO1へ導入した形質転換体を作成した。どちらのPAO1形質転換体も、それぞれcefepime, ceftazidime, imipenemおよびmeropenemに対して耐性を獲得したが、両形質転換体においてMICに差はなかった。しかし、1/2MIC濃度のセフェピム存在下でのgrowth kinetics assayおよびtime-killing assayを実施したところ、薬剤なしと比較して、1コピーの形質転換体は増殖が抑制されたが、タンデムリピートの形質転換体はほとんど影響を受けなかった。ウェスタンブロッティングにより両形質転換体VIMタンパク発現量を解析したところ、タンデムリピートの形質転換体のVIM-24の発現は1コピーと比較して2.6倍高かった。以上の結果から、カルバペネム耐性緑膿菌のVIM-24タンデムリピートが1/2MICセフェピムに対する耐性を与えることにより、日本の医療施設で拡大していくことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VIM-24遺伝子をタンデムリピートに保有するカルバペネム耐性緑膿菌の細菌学的特性について論文を投稿しアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
2021から2022年度に分離されたMDRP100株について薬剤感受性試験を実施したので、引き続き薬剤耐性因子を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で2021年度分離株の収集ができず、急遽2022年分離を随時収集することに変更したため、株の収集に時間を要した。薬剤感受性試験は実施できたが、耐性因子の確定にまで至らなかった。耐性因子確定のための次世代シーケンス試薬購入費として2023年度に使用する
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