研究実績の概要 |
日本の医療施設における多剤耐性緑膿菌(MDRP)の新興・伝播が医療安全を根底から脅かしている。日本で分離されるMDRPのほとんどはIMP型カルバペネマーゼを産生していたが、我々は、2012年以降MDRPが産生する流行性カルバペネマーゼが大きく変化していることを見出した。本研究の目的は、日本の医療施設で分離されたMDRP臨床分離株の分子疫学解析を通して、カルバペネマーゼの進化様式を解明することである。 研究代表者は、本研究により2019年から2022年まで日本の医療施設で分離されたMDRP臨床分離株323株の分子疫学解析を行った。その結果、日本の医療施設でVIM型カルバペネマーゼ産生MDRPの分離率が上昇していることを見出した。MLST解析の結果、13株がST1816に属した。ST1816株は特定の地域で分離され、VIM遺伝子を約60kbpの同サイズのプラスミドに保有していた。さらに、ST1816株で新規バリアントVIM-60(5株), -66(4株), -76(2株)を同定し、VIM遺伝子が特定に地域において変異を繰り返し拡大していることを明らかにした。また、13株中4株が、プラスミド上にVIM-24をタンデムリピートに保有していた。カルバペネム耐性緑膿菌の細菌学的特性を解析した結果、VIM-24タンデムリピートが1/2MICセフェピムに対する耐性を与えることを見出した。 さらに最終年度は、2022年度に分離されたMDRP186株について薬剤耐性因子を同定し、特定の地域でメロペネムに高度耐性を示すIMP-78産生株が新興していることを見出した。今後新たに流行性カルバペネマーゼが変化する可能生が示唆された。
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