研究課題/領域番号 |
20K16259
|
研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
引地 遥香 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 研究員 (20829105)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 結核菌 / マクロファージ / インターフェロンγ / ChIPアッセイ / レポーターアッセイ / ChIP-seq |
研究実績の概要 |
結核菌に感染したヒトのほとんどは、宿主の免疫により結核菌を封じ込め、潜在性結核感染症(LTBI)の状態となる。この状態から、生涯で活動性結核を発病する割合は、5-10%ほどである。服薬中断や不規則内服による耐性菌の出現や重篤な副作用などのLTBI治療の不利益を最小に抑え、 活動性結核を発病しやすいヒトに効果的にLTBI治療を行うため、結核発病を予測するバイオマーカーが求められている。 近年、マクロファージの分化に関与する遺伝子MAFB(MAF bZIP transcription factor B)は結核発病と関連する可能性が報告された。これまでの研究により、MAFBが結核菌感染マクロファージにおいてIFN-γ signaling pathwayを制御することを初めて示した。結核菌に感染したマクロファージはIFN-γ刺激を受け活性化し殺菌するため、MAFBは結核感染に抵抗的にはたらくことが示唆されたがその分子機構は不明である。 本年度は、転写因子であるMAFBの結合部位を同定するため、レポーターアッセイを行った。IFN-γ誘導性のケモカインであるCXCL10またはMAFBノックダウンによりその遺伝子発現が減少することが分かっているCCL2のプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだプラスミドDNAを作製し、ヒトマクロファージ様細胞株(THP-1) に導入した。この実験系ではIFN-γ刺激によるルシフェラーゼ活性の上昇は見られなかった。また、ChIPアッセイを行うため、MAFBをノックアウトしたTHP-1にタグ付きMAFBタンパク質を発現させるプラスミドDNAを導入した。タグの修飾によりMAFBの翻訳が阻害されることがわかった。次年度に予定していたChIP-seqによるMAFB制御遺伝子の網羅的解析を行うための条件検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度に予定していたChIP-seqによるMAFB制御遺伝子の網羅的解析を前倒して進めている。ChIP-seqとTn5 transposaseによるライブラリー調整を組み合わせたChIPmentaionを行うため、詳細な条件検討を行っている。現在までに、ChIPmentaionに適した長さのDNA断片を得るための超音波破砕の条件を決定し、ヒストン修飾タンパクであるH3K4me3を陽性コントロールとして使用するため、ウェスタンブロットでH3K4me3タンパク質を検出した。
|
今後の研究の推進方策 |
ChIPmentaionにより、転写因子MAFBが直接制御する遺伝子を網羅的に解析し同定する。 また、ヒト活動性結核のモデルマウスにおけるMafBの機能を解明するため、MafBノックアウトマウスをGONAD法により作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CHIPアッセイを行わずに、網羅的に発展させた実験手法であるChIP-seqを前倒して進めることにした。新型コロナ感染症により、出席を予定していた学会がWEB開催となったため、旅費を使わなくなった。次年度は、次世代シークエンサーを使ったChIP-seqのための試薬を購入する。また、ノックアウトマウス作成と飼育管理に助成金を使用する予定である。
|