MAFBは結核発病に関連する有力な候補遺伝子として同定されていたが、結核免疫における機能は不明であった。研究代表者らはヒトマクロファージにおいて、MAFBが結核免疫に重要であるインターフェロン応答を制御することを示した。本研究において、抗MAFB抗体を用いたChIP-seqを行い、MAFB結合配列に対するGene Ontology解析を行った。その結果、MAFB転写因子が直接制御する遺伝子群に細胞の形態形成やインターフェロン応答等を含む免疫応答を制御する遺伝子群が含まれることを明らかにした。最終年度において、結核菌感染マウスにおけるMafBの機能を探索した。Mafb欠損マウスは中枢性無呼吸により生後まもなく死亡するため、マクロファージ特異的Mafb欠損(Mafb-cKO)マウスを用い、結核菌を感染させた。350日の観察期間において、Mafb-cKOマウスの結核菌感染後の生存時間は野生型と比較して有意に短縮した。感染後10週のMafb-cKOマウスの肺内菌数は有意に増加した。さらに、結核菌感染骨髄由来マクロファージおよび感染肺の、RNAシークエンスを行った。その結果、結核菌感染Mafb-cKOマウスに特異的に亢進および減弱する免疫遺伝子群が存在することを確認した。Weighted Gene Coexpression Network解析においても、結核菌感染Mafb-cKOマウスにおいて特異的に共発現している免疫関連の遺伝子モジュールを検出した。本研究において、Mafb-cKOマウスが結核菌感染に感受性を示したことから、Mafbは結核菌感染に対して宿主防御的に機能することが示唆された。Mafbが関与する分子機構は、結核の発病抑制に重要な機構である。さらなる解析により、結核発病を予測する生物学的指標の発見や、発病を制御するワクチンの開発に貢献する。
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