研究実績の概要 |
慢性活動性EBウイルス感染症 (CAEBV) は進行性、治療抵抗性のEBV陽性T, NK細胞腫瘍である。発熱などの慢性炎症症状に加え、EBVが感染したTもしくはNK細胞が腫瘍性に増殖し、末梢血および組織に浸潤する。EBV特異的マイクロRNAであるmiR-BARTsは、EBV陽性B細胞腫瘍においてエクソソームに内包されて周囲の細胞に伝播し、腫瘍発症に寄与することが報告された。このことから、CAEBVにおいても同様のメカニズムが存在していると推測した。本課題では、CAEBVの発症、病態形成における、分泌型miR-BARTsの発現プロファイルおよびその機能を解析した。 CAEBVおよびその類縁疾患の細胞株培養上清から超遠心法で分離したエクソソーム、および患者血漿からRNAを抽出し、分泌型miR-BARTsの発現プロファイルを明らかにした。また、患者組織を用いてmiR-BARTsに対するin situハイブリダイゼーション法と免疫染色を実施し、EBV感染T, NK細胞周辺の単球にmiR-BARTs陽性像を得た。さらに、miR-BARTsを内包するエクソソームおよび細胞株培養上清を健常者ヒト単球に添加したところ、炎症性サイトカインを産生するマクロファージに分化した。以上より、CAEBVのEBV陽性T, NK細胞から分泌されたmiR-BARTsを内包するエクソソームは、本疾患の炎症およびその暴走であるHLH発症に寄与している可能性が示唆された。第25回欧州血液学会、第64回米国血液学会で発表し、論文はCancers (2021;13(20)) に掲載された。 さらにmiR-BARTsを網羅的に抑制するASOを開発し「EBV関連疾患を標的とする核酸医薬」として、特許出願およびPCT出願を行った。
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