研究課題
CD4 T細胞は外来抗原特異的獲得免疫応答の中核となるリンパ球であるが、我々は同細胞中に、自己抗原特異性を有し自然免疫機能を発揮し得る新規細胞集団「Memory-phenotype (MP)細胞」を同定した。そこで本研究では、MP細胞の質的特異性を明らかにするとともにその産生・分化・活性化機構を解明し、同細胞の免疫学的機能を究明することを目的とした。以下の通り、現在のところ研究は順調に進行している。(1) MP細胞の質的特異性:MP細胞と従来型の抗原特異的メモリー細胞の差異が明らかになりつつある(投稿準備中)。また、自己抗原特異的MP細胞のTCRレパートリーについても具体的な同定に成功した。ヒトMP細胞の同定については来年度の課題である。(2) MP細胞の産生・分化・活性化機構:MP細胞が転写因子発現によりMP1、MP2、MP17サブセットに分類される可能性を明らかにするとともに、うち約半数を占めるMP1細胞の詳細な産生分化機構やトキソプラズマ感染に対する自然免疫的生体防御機能を解明・報告した(Nat Commun 2020)。MP2、MP17については現在解析中である。(3) MP細胞の免疫学的機能:MP細胞は自己抗原特異性を有するため自己免疫活性を有し、同活性は定常状態においては制御性T細胞により抑制されているとの仮説を提唱した(Curr Opin Immunol 2020)。同仮説に一致して、我々は、MP細胞が全身性の炎症を惹起しうることを発見するとともに、この炎症原性が制御性T細胞により抑制され得るとの知見を得た。現在、その詳細なメカニズムを解析中である(投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
(1) MP細胞の質的特異性:当初計画の通り、MP細胞と抗原特異的メモリー細胞をSingle cell RNAseq解析に供し、両者を区分しうる分子マーカーの候補を複数個同定した。また、MP細胞のTCRレパートリーをDeep sequenceにて解析し、自己特異的MP細胞のCDR3配列の具体的な同定に成功した。(2) MP細胞の産生・分化・活性化機構:当初計画に則り、転写因子発現によりMP細胞がMP1やMP17などの複数のサブセットに分類されることを発見し、うち約50%を占めるMP1分画の詳細な産生分化機構や生体防御機能を解明した。(3) MP細胞の免疫学的機能:研究計画に記載の実験系により、MP細胞が全身性の炎症を惹起しうることを示唆する所見を得た。同炎症の分子メカニズムや制御性T細胞による抑制機構につき、順調に知見が蓄積されつつある。
(1) MP細胞の質的特異性:今年度得られたMP細胞マーカーの候補をもとにSPF、GF、AFマウスにおけるMP細胞を詳細に解析し、その産生・維持メカニズムを究明する。同マーカーを用い、ヒトMP細胞の解析も行う。(2) MP細胞の産生・分化・活性化機構:MP1サブセットの産生分化機構や感染防御機能が解明されたため、MP2、MP17サブセットについても同様の解析を行う。(3) MP細胞の免疫学的機能:今年度に確立した、MP細胞の炎症原性を解析する手法を用い、同炎症の細胞・分子メカニズムを追究する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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