研究課題/領域番号 |
20K16273
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
矢島 玲奈 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10431701)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗PD-1抗体治療耐性 / 疲弊化CD8T細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が独自に確立した抗原特異的疲弊化CD8T細胞を生体内の10~50倍程度誘導できるマウス腫瘍モデルを用いて、抗PD-1抗体加療における耐性メカニズムの解明を行うことを目的に研究を行った。 これまでの研究で抗PD-1抗体投与を腫瘍接種7日目に投与すると、コントロール抗体投与と比較し腫瘍縮小を認め、OT-I細胞は増加していたが、14日目投与ではコントロール抗体投与と比較し、全く抗腫瘍効果を認めず、OT-I細胞の数も変わらなかった。 そこで続いて抗PD-1抗体による抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにするため、抗PD-1抗体を7日目投与または14日目投与におけるOT-I細胞のIFN-γ産生能とグランザイム発現をコントロール抗体投与群と比較し検討した。7日目投与においてOT-I細胞のIFN-γ産生能は、コントロール抗体投与群より上昇し、14日目投与においては両群間で差がなかった。また、グランザイム発現は、7日目および14日目共に、両群間で差がなかった。 次に、抗PD-1抗体7日目投与後の既知の免疫チェックポイント分子の発現(CTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGIT)を検討した。抗PD-1抗体投与の3日後で検討するとコントロール抗体投与群と比較しLAG-3またはTIGITの発現が上昇していたが、TIM-3およびCTLA-4の発現は変化がなかった。それらの発現と細胞分裂を比較するためにCFSEで標識したOT-I細胞で検討すると、LAG-3、TIGIT共にクローン増殖に伴って発現が上昇していた。以上からLAG-3またはTIGIT発現上昇が抗PD-1抗体治療の耐性に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究において耐性メカニズムとして既知の免疫チェックポイント分子の中でLAG-3とTIGITの可能性を見出すことができた。次年度ではこのモデルでセルソータを用いて耐性細胞を単離し、網羅的解析を行い未知の免疫チェックポイント分子を含めた遺伝子発現の変化の検索を行うことが可能な状況となっている。以上、全体を通して当初の研究計画に沿って進行できているため「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討としてPD-1抗体加療後の耐性化を来たしたOT-I細胞をセルソーターを用いて単離し遺伝子発現の変化を網羅的に解析を行う予定であった。しかしながら研究代表者の退職に伴い研究を続けることが困難となったので研究中止の申請を行った。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は研究中止に伴い必要なくなった。
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