本研究では、我々が独自に確立した抗原特異的疲弊化CD8T細胞を生体内の10~50倍程度誘導できるマウス腫瘍モデルを用いて、抗PD-1抗体加療における耐性メカニズムの解明を行うことを目的に研究を行った。 モデルとしてOT-Iマウス(OVA257-264特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウス)の脾臓からナイーブCD8T細胞を単離しC57BL/6マウスに移入後、EG.7(卵白アルブミン産生EL-4細胞)を皮下接種し、抗原特異的疲弊化CD8T細胞(疲弊化OT-I細胞)を誘導し解析した。このモデルで抗PD-1抗体投与を腫瘍接種7日目に投与すると、コントロール抗体投与と比較し腫瘍縮小を認めOT-I細胞は増加していたが、14日目投与ではコントロール抗体投与と比較して全く抗腫瘍効果を認めず、OT-I細胞の数も変わらなかった。このことから14日目には抗PD-1抗体治療に対して耐性があると考えられた。続いて耐性と既知の免疫チェックポイント分子の関与を検討するため、抗PD-1抗体7日目投与後にCTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGITの発現を検討した。PD-1抗体投与3日後ではコントロール抗体投与群と比較し、LAG-3とTIGITの発現が上昇していたが、TIM-3およびCTLA-4の発現は変化がなかった。それらの発現と細胞分裂を比較するためにCFSEで標識した細胞で検討すると、LAG-3、TIGIT共にクローン増殖に共経って発現が上昇していた。以上からLAG-3またはTIGIT発現上昇が抗PD-1抗体治療の耐性のメカニズムに関与している可能性が考えられた。続いて、新規耐性メカニズムを検討するため耐性化したOT-I細胞をセルソータを用いて単離した。純度は100%で単離できた。ここで研究代表者の転勤に伴い本研究はこれ以上の継続が困難となり中止とした。
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