自然免疫受容体の一つであるTLRは、微生物の構成成分を認識して免疫反応を引き起こす。TLRは病原体の侵入を防ぐとともに、生体の恒常性の維持にも深く関与していることから、その活性化は時空間的に厳密に制御される必要がある。UNC93B1は複数回膜貫通型の膜タンパク質であり、主に核酸認識TLRと小胞体膜上で結合する。UNC93B1はTLRのリガンド刺激に応じてこれらTLRをエンドソームへと輸送し、TLRの活性化のバランスを調節するとされているが、その詳細な制御機構は不明である。本申請課題では、UNC93B1と各種TLRとの複合体の構造解析を行い、UNC93B1によるTLRの活性制御機構の解明を目指す。 今年度は、TLR3およびTLR7とUNC93B1との複合体の三次元構造の解明に成功した。TLRとUNC93B1を哺乳動物細胞で共発現させ、界面活性剤ジギトニンで可溶化した。TLR3/UNC93B1およびTLR7/UNC93B1において均一な複合体が得られ、クライオ電顕でそれぞれ3.3Åおよび4.2Åの分解能で構造決定した。TLR3/UNC93B1は1:1の複合体を、TLR7/UNC93B1は2:2の複合体を形成していた。TLRはリガンド結合に伴って活性化型の二量体を形成することが知られている。今回得られた構造は不活性化型の構造であったことから、今後は活性化型二量体の構造解析に取り組む予定である。
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