研究課題/領域番号 |
20K16275
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土屋 遥香 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50868560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜線維芽細胞 / MTF-1 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、関節リウマチ(RA)患者由来滑膜線維芽細胞(SFs)を用いて、APTO-253(MTF-1活性阻害薬、CAS Registry Number 1422731-37-0)による増殖能や遊走・浸潤能、病態関連遺伝子のmRNAおよび蛋白発現量の変化を評価した。まず、APTO-253(1 - 4 ug/mL)を添加したRA患者由来SFsを、関節内の複合的な炎症環境を模した8種類のサイトカイン混合(IFN-α、IFN-γ、TNF-α、IL-1β、IL-6/sIL-6R、IL-17、TGF-β1、IL-18)で刺激した。その結果、APTO-253は濃度依存性に、炎症性メディエーター(IL-6・CCL5)のmRNAおよび蛋白発現を抑制した。さらに、関節炎モデルマウス(collagen-induced arthritis: CIA)を用いて、APTO-253による関節炎の変化を評価した。ウシ2型コラーゲンによる免疫と同時にAPTO-253の投与を開始する予防実験と、関節炎の発症を確認後にAPTO-253の投与を開始する治療実験を行った。その結果、APTO-253は、関節炎の発症および、発症後の関節炎の進行を抑制した。また、治療実験では病理学的評価を加え、滑膜内への炎症細胞浸潤や骨軟骨破壊が抑制されることを確認した。これらの結果は、MTF-1の活性阻害が、SFs由来の炎症性メディエーター発現の修飾を介して、関節炎を制御する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、1)APTO-253によるMTF-1活性阻害が、in vitroにおけるRA患者由来SFsの病的形質獲得やin vivoでの関節炎形成に与える影響の解析、2)次年度におけるin vivo検証実験で使用するCol6-cre MTF-1 knockout mouseの作製を目標としており、上述の如く当初の目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、SFs特異的なMTF-1の機能解明を目的に、in vivo検証実験を行う。具体的には、SFs特異的なCre発現マウスとMTF-1 floxedマウスの交配により得られたマウス(Col6-cre MTF-1 knockout mouse)を用いて、定常状態およびウシ2型コラーゲン免疫による関節炎誘導下における評価を行う。解析は、関節炎の重症度、関節の病理学的評価、画像評価(micro CTなど)、滑膜組織のシングルセル解析など多角的な評価方法を用いることで、関節炎形成に対するMTF-1の寄与メカニズムを解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内における新型コロナウイルスの蔓延により、科研費を使用した研究活動の一定期間の停止を余儀なくされた。令和3年度は、令和2年度に作製したCol6-cre MTF-1 knockout mouseと予備検討の成果を基盤に、計画的に研究を進行する。
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