好塩基球が慢性アレルギー炎症の誘導や寄生虫感染防御に重要な役割を果たすことが明らかになってきたものの、好塩基球の分化経路には不明点が数多く残されている。前年度までの研究にて骨髄中の好塩基球分画の高感度シングルセルRNA-seq解析を行った結果、好塩基球前駆細胞の下流に位置する細胞として、未熟好塩基球と成熟好塩基球の2つの分画を同定した。さらにin vitroにおける刺激実験から、未熟好塩基球はIgE依存的な刺激ではほとんど活性化しない一方、IL-3やIL-33といったサイトカイン刺激にはよく反応し成熟好塩基球よりも多くのIL-4を産生することが明らかになった。 本年度はさらに未熟好塩基球の生体内での機能を明らかにする目的で、好塩基球が関与するモデルとして知られる消化管寄生蠕虫Nippostraogylus brasiliensis(Nb)の感染モデルを行った。定常時には未熟好塩基球は骨髄中にのみ存在し末梢ではほとんど検出されなかった一方、Nb感染時には末梢血中や肺炎症局所に多数浸潤していることが明らかになった。さらに、Nb2次感染時には皮膚炎症局所にも未熟好塩基球の同定が可能であることを解明した。Nb2次感染時の好塩基球を高感度シングルセルRNA-seqにより解析したところ、炎症局所の未熟好塩基球も骨髄中と同様に、高い増殖能を保っており、炎症局所における好塩基球のプールを供給する役割を担っていることが考えられた。最後に、未熟好塩基球が骨髄外へ流出するメカニズムを解析したところ、IL-3が好塩基球に働くで好塩基球上のCXCR4の発現低下が起こり、これにより未熟好塩基球が骨髄に留まれなくなることで骨髄外へ流出することが明らかになった。以上から、IL-3が全身性に上昇するような寄生虫感染時には未熟好塩基球が骨髄外へ流出し、炎症局所の好塩基球プールとして働くことが示唆された。
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