この申請のメインであった記憶B細胞での生存ニッチを示すために、CreERT2 EBI2 floxやCreERT2 TACI floxマウス、Ym1-DTRマウスなどいくつかの遺伝子改変マウスを解析してきたが記憶B細胞の減少を観察できず、2年間進展してこなかった。また、研究の軸においていたBAFF-Rと記憶B細胞の生存に関する論文が別グループにより発表された。そこで、これらと並行して、もう一つのB細胞記憶である長寿命形質細胞の生存ニッチの解析を始めた。長寿命形質細胞のニッチは骨髄に存在すると言われているが、短寿命形質細胞と長寿命形質細胞を識別可能な分子マーカーが存在しなかったために、長寿命形質細胞のニッチ研究は進展してこなかった。そこで、形質細胞の生存期間により長寿命形質細胞を判別するために、新規の形質細胞系統追跡マウスを作製した。このマウスでは、薬剤の投与時に形質細胞が不可逆的に蛍光標識されるが、投与後新規に形成された形質細胞は標識されない。このため、形質細胞が標識後何日生存していたかを判別することができる。この系を用いて、免疫直後に誘導された骨髄形質細胞と標識後1ヶ月生存した長寿命形質細胞の動態を解析したところ、骨髄に流入直後では動いている形質細胞が観察できるが、全ての長寿命形質細胞は静止していることを明らかにした。このデータは骨髄のある場所に生存に必要なニッチが存在し、そこに形質細胞が静的に存在することが、長期生存に重要である可能性を示唆する。
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