研究課題
マクロファージや樹状細胞などの骨髄系細胞に発現しているITAM(immunoreceptor tyrosine-based activating motif)共役型C型レクチン受容体などのシグナル伝達に必須の役割を担うCARD9の欠損マウスは、結核菌感染に対して、抵抗性が著しく減弱することが報告されている。ところが、CARD9欠損マウスにおいても、結核菌感染後の抗原特異的T細胞応答は野生型マウスと同等に誘導されることから、CARD9は特に感染初期の宿主防御に重要であると考えられているが、寄与する免疫応答の詳細は良くわかっていない。感染初期においてCARD9の寄与する免疫応答を明らかにするため、申請者は、Mycobacterium bovis BCG(M. bovis BCG)を用いてマウス腹腔内感染実験を行い、CARD9欠損マウスでは感染局所へのLy6C陽性炎症性単球やNK細胞の浸潤が減少し、腹腔内で菌排除が遅れることを見出した。生理的な感染経路である経気道感染においてもこれらの現象が認められるかを明らかにするため、当該年度は、M. bovis BCGを用いてマウス経気道感染実験を行った。マウスにM. bovis BCGを経気道的に感染させ、感染後7、21日後の肺内菌数を解析したが、両日間において、野生型とCARD9欠損マウスの菌排除に顕著な差は認められなかった。同じM. bovis BCGを用いたマウス腹腔感染モデルでは、感染後の細胞浸潤に顕著な差が認められていたため、フローサイトメーターを用いて経気道感染マウス肺でも浸潤細胞の解析を行ったが、野生型とCARD9欠損マウスで顕著な差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に従い、生理的な感染経路である経気道感染実験を行ったが、感染初期における臓器内菌数や感染局所への浸潤細胞を指標とした解析では、野生型とCARD9欠損マウスで顕著な差は認められなかった。しかしその一方で、CARD9欠損マウスでは、M. bovis BCGマウス腹腔感染モデルと同様に、臓器内IFNgが減少傾向にあることを見出した。
M. bovis BCGを用いたマウス経気道感染実験において、感染初期における臓器内菌数や感染局所への浸潤細胞を指標とした解析では、野生型とCARD9欠損マウスに顕著な差は認められなかったが、CARD9欠損マウスでは臓器内IFNgが低下していることは確認できたため、IFNgレポーターマウスを用いてIFNg産生細胞を明らかにすると共に、抗原特異的T細胞応答の誘導やその後の菌排除への影響を検討する。
異動に加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、次年度使用額が生じた。異動先でも継続して研究できる環境を整えつつあり、次年度に合算して使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 産業財産権 (1件)
Current topics in microbiology and immunology
巻: 429 ページ: 103~115
10.1007/82_2020_203
Journal of Experimental Medicine
巻: 218 ページ: e20200815
10.1084/jem.20200815