研究課題
プロテアソームは不要なタンパク質、正しく合成されなかったタンパク質を分解、除去することで細胞内環境の恒常性維持に寄与するタンパク質複合体である。プロテアソームは複数のサブユニットから構成されるが、このサブユニット遺伝子のバリアントにより凍瘡様皮膚炎と脂肪萎縮を主徴とする自己炎症性疾患、プロテアソーム関連自己炎症性症候群(Proteasome-associated autoinflammatory syndrome, PRAAS)が生じる。炎症症状はPRAASに似るが、PRAASと異なり免疫不全を呈する、独立した2症例に、新規のプロテアソームサブユニット遺伝子のバリアント(PSMB9 p.G156D)が見出された。これまでに、その遺伝子バリアントを持つマウスを作製、解析し、ヘテロ変異マウスが、T細胞、B細胞の減少をはじめとする、患者の所見と共通する多彩な免疫異常を示すことを見出している。B細胞に関しては、抗体産生細胞の分化障害をきたしている可能性が示唆されている。T細胞に関しては、プロテアソームが、胸腺の上皮系細胞においてMHCクラスI拘束性抗原ペプチドの生成を介してCD8T細胞の生成に関与することが知られていることからこの点の解析を行った。ヘテロ変異マウスにおいてMHCクラスIの発現はB細胞、樹状細胞、胸腺上皮細胞いずれもほぼ正常であった。また、MHCクラスI拘束性抗原ペプチドとして、卵白アルブミン由来の抗原ペプチドを検出する系を用いて検討したが、この抗原ペプチドの生成に障害は見られなかった。一方、骨髄キメラマウスの解析より、T細胞の減少はT細胞自身の異常ではなく、上皮系細胞を含む非造血系細胞の異常であることが示唆された。この結果から、プロテアソームは、抗原ペプチド生成能とは別の機構で、T細胞の生成を支持する環境形成に重要であることが示唆された。
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https://www.wakayama-med.ac.jp/intro/press/r3/211207/07_menekifuzen.html