研究課題/領域番号 |
20K16290
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石原 沙耶花 北里大学, 理学部, 助教 (50741865)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Rap1 / 大腸炎 / 腸内細菌 / Treg |
研究実績の概要 |
本研究室で作製したT細胞特異的Rap1欠損マウス(CKOマウス)は、Th17細胞が増加することで大腸炎を自然発症し、3-4週齢にかけて腸内細菌叢が顕著に変化することがわかっている。そこで本年度は、(1)大腸炎発症に関わる腸内細菌の解析および、(2)CKOマウスにおけるTregの解析を行った。 (1)異なる菌種に対して効果のある5種類の抗生剤(アンピシリン、ネオマイシン、バンコマイシン、ストレプトマイシン、コリスチン)を野生型およびCKOマウスに単剤投与し、病態解析ならびに腸内細菌叢のNGS解析を行った。病態解析の結果、コリスチンのみ抑制効果がないことがわかった。現在NGS解析結果と病態解析結果を合わせて、発症に関わる菌の特定を進めている。また、腸内細菌叢の構成に影響を及ぼすReg3など一部の抗菌ペプチドが有意に増減していることを見出している。 (2)Th17細胞の分化抑制に重要な役割を果たすRORgt+Treg細胞について異常が生じている可能性を検討するため、野生型およびCKOマウスの大腸粘膜固有層におけるRORgt+Treg細胞の割合を解析したところ、CKOマウスではRORgt+Tregが出現し始める4週齢以降で減少していることがわかった。TregはCTLA-4依存的に抗原提示細胞のCD80を取り込む(TE: Trans-endocytosis)ことで、ナイーブT細胞 (TN細胞)のCD28とCD80を介した共刺激を阻害し、活性化を抑制することがわかっている。そこで、TregにおけるCD80のTE能及びTN細胞の分裂抑制能を検討したところ、Rap1の欠損によりCD80のTEが低下し、TN細胞の分裂抑制能も低下していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はCKOマウスを用いて、大腸炎発症に関わる腸内細菌叢の解析とTregの解析を行った。腸内細菌叢の解析では、抗生剤の単剤投与による病態解析、糞便・盲腸内容物におけるNGS解析結果の取得まで進められた。また、大腸上皮細胞の単離方法ならびにTranswellを用いた大腸上皮細胞の培養システムを確立することができ、両手法を用いて、CKOマウスにおいて発現量が増減している抗菌ペプチドを同定した。また、Tregの解析によって、CKOマウスでは大腸粘膜固有層においてRORgt+Treg細胞が減少し、さらに抑制機能も低下したことで、Th17細胞が増加している可能性を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度得られた腸内細菌叢のNGS解析結果と病態解析結果から大腸炎発症に関わる腸内細菌を特定するとともに、発現量の変化していた抗菌ペプチドがそれらの菌に影響を及ぼす可能性を検討する。また、抗菌ペプチドの発現量が変化した原因として、CKOマウスの大腸粘膜固有層で増加しているTh17細胞が関与している可能性を探る。また、Rap1欠損によりTreg細胞の分化・抑制機能が低下している原因を、TCR signalに着目し解析し、大腸炎発症機構の解明につなげる。
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