本研究室で作製したT細胞特異的Rap1欠損マウス(CKOマウス)は、腸内細菌依存的に大腸粘膜固有層でTh17細胞が増大する事でヒトIBDに類似した大腸炎を自然発症する。本研究課題では、この大腸炎モデルマウスを用いて病態形成に関与する腸内細菌と病原性Th17細胞が生成する機構を明らかにすることを目的とし、研究を行った。 <大腸炎発症に関わる腸内細菌の特定> 病態発症の原因菌を探索するため、昨年度大腸炎モデルマウスに5種類の抗生剤を単剤投与し、盲腸内容物、糞便における腸内細菌叢のNGS解析を行った。本年度は結果の解析を行い、大腸炎の発症が抑制されなかったcolistin群でのみ存在する菌47種類を見出した。その中でも、未投与群・colistin群の両群で存在比の高かった細菌Xを大腸炎発症の原因菌候補とし、無菌化した大腸炎モデルマウスに投与した。その結果、コントロール細菌投与群と比較して、大腸粘膜固有層におけるeffector CD4+ T細胞中のTh17細胞の割合が増加し、大腸組織のHE染色像から大腸炎の発症が認められた。以上の結果より、細菌Xが原因菌の一つである可能性が示唆された。 <病原性Th17細胞が生成する機構> 昨年度までの研究で、新生児期に出現するTh17細胞の分化抑制に重要な役割を果たすRORgt+Tregが、Rap1欠損マウスでは4週齢以降減少し、機能も低下していることがわかった。本年度は、Rap1欠損によりTregの分化・活性化が低下している原因をTCR signalに着目し解析を行った。その結果、Rap1の欠損により、TCR刺激により形成される突起状のアクチン構造(Actin foci)の形成が顕著に低下することで、細胞内へのCa2+の流入量の低下、転写因子の核内移行の低下及びTCR刺激依存性のTregへの分化が低下することがわかった。
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