研究実績の概要 |
本研究は、2型糖尿病での炎症の主座は肝内免疫担当細胞であり、GLP-1受容体作動薬が肝内免疫担当細胞、特にT細胞にアネルギーを誘導し、過度の炎症起点が制御されNAFLDおよび全身の糖脂質代謝異常が是正される、との仮説の検証を目的としている。 令和5年度においては、昨年度の研究において得られた知見である、GLP-1受容体発現が活性化あるいはエフェクターメモリT細胞上に発現していることから、GLP-1受容体作動薬がアネルギーなどのT細胞の機能変化をもたらすかどうかを経時的変化とともに解析することとした。雌性Balb/cマウスの脾臓から抽出したCD4およびCD8陽性T細胞サブセットをGLP-1RA存在下でCD3/28抗体を用いて活性化し、活性化T細胞遺伝子発現を経時的に解析した。その結果、GLP-1受容体作動薬存在下ではT細胞活性化3時間の時点ですでにサイトカイン遺伝子発現プロファイルの変化を認めた。 GLP-1受容体作動薬が特に活性化あるいはエフェクターメモリーT細胞上に発現しているGLP-1受容体へ直接作用し、活性化早期相においてT細胞表現型をもたらし、炎症性サイトカインを抑制することを見出した。 研究期間全体を通して、抗CD3抗体投与後のマウスの脾臓や肝内リンパ球でGLP-1R陽性CD4陽性T細胞の有意な増加を認め、Th1,Th2,Th17,調節性T細胞の各ヘルパーT細胞へ分化させたT細胞にてもGLP-1Rの遺伝子および蛋白発現が増加していること、そしてGLP-1受容体存在下で抗CD3/28抗体刺激したT細胞を培養すると細胞増殖やサイトカイン産生の抑制を認めたことから、GLP-1受容体を介したT細胞の抑制効果が認められ、T細胞アネルギーに類似した表現型を示すという新たな知見を見出した。
以上の結果を英文科学雑誌に投稿準備中である。
|