前年までの結果からJunBはエフェクター細胞分化の際に細胞生存に必須の役割を果たすことを報告した。本年度は予定していたChip-seqやRNA-seqの解析を進めた。前年度の結果からJunBはアポトーシス誘導因子であるBimの抑制に関わっていることが判明していたので、この遺伝子に強く結合することを予測していたがChip-seqの結果では強く結合する特異的なピークは観察されなかった。この結果からJunBが細胞死の上流シグナルであるBimを抑制するメカニズムは他の遺伝子の発現制御をすることで生じる間接的な影響であると推測され、この解明にはより詳細な研究が必要であると思われた。一方で前年度に着目した疲弊化マーカーであるPD-1やTim-3遺伝子に対するJunBのChip-seqの結果は興味深いもので、特徴的なピークがいくつか発見され現在Chip-pcrによる結合能の確認作業を行っている。また、より生体内に近いin vitroモデルでJunB欠損細胞に疲弊化を誘導すると、前年に報告した結果よりもさらにPD-1やTim-3の発現亢進が確認された。また、前年度とは異なり、より長期的な培養条件でのRNA-seqの解析結果において、疲弊化に関連する遺伝子の発現亢進がJunB欠損細胞で確認された。これらの結果から、申請者はJunBの役割は細胞活性化時におけるエフェクター細胞の生存に加え、疲弊化分子も抑制する多機能転写因子として働く可能性があることを発見した。現在追加の実験を行いながら、論文投稿をする準備を行っている。
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