本研究では抗EGFR抗体薬を用いて、抗EGFR抗体薬によるEGFRの内在化の機序を明らかにするとともに、その内在化およびライソゾーム分解の過程で重要な役割を 果たす蛋白質や遺伝子を抽出する。次いで、抗EGFR抗体薬の効果の高い大腸癌細胞株と低い細胞株を用いて、候補遺伝子をknockdownまたは遺伝子導入して内在 化の変化及び薬剤感受性の変化を調べ、そのバイオマーカーとしての意義を明らかにする。さらに、抗EGFR抗体薬により治療している大腸癌症例の癌組織におけ る候補蛋白質(遺伝子)の発現を調べ、治療予測のバイオマーカーとしての有用性を明らかにすることを目的にしている。 これまで研究代表者は抗EGFR抗体薬が 癌細胞表面のEGFRに結合すると、EGFRが内在化してリサイクルされないで分解されること、また免疫蛍光二重染色により、内在化したEGFRは後期エンドソームに移行しライソゾームに運ばれて分解されることを報告してきた。 これまでの実験結果を背景に研究代表者は令和2年度は大腸癌細胞株 を用いて蛍光顕微鏡により細胞膜上のEGFR量を定量化した。各経路の重要な蛋白質をsiRNAによるノックダウンや特異的阻害剤を用いることで抗EGFR抗体薬の内在化経路を同定した。そして抗EGFR抗体薬添加時の細胞から蛋白抽出を行いプロテオーム解析を施行した。解析結果を内在化経路に関連する文献や各種蛋白の機能に照合し内在化経路に関連する候補遺伝子を絞り込んだ。 令和3年度は候補蛋白(遺伝子) の細胞内局在が抗EGFR抗体薬添加時に蛍光二重免疫で優位にEGFRと共局在することを確認した。また候補遺伝子をknockdownすることで抗EGFR抗体薬の効果の減弱や細胞内動態の変化も確認した。 令和4年度は前年度まで行ってきた研究成果をもとに臨床検体を用いて腫瘍内候補蛋白発現と抗腫瘍効果や全生存期間との相関関係を見い出した。現在論文執筆中である。
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