研究課題
NKG2A/HLA-E経路は、NK細胞の活性化を制御する新規免疫チェックポイント機構である。本研究は、胃癌におけるNKG2A/HLA-Eに注目し、抗腫瘍免疫応答におけるNK細胞活性化の意義を検討するとともに、NKG2A/HLA-Eの発現制御に関わる分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、胃癌臨床検体を用いたNK細胞浸潤及び機能制御に関わるNKG2A/HLA-Eの評価として、胃癌切除検体を用いたHLA-Eと腫瘍浸潤NK細胞の発現パターン解析を行った。胃癌根治切除検体232例を用いて、HLA-Eの免疫組織染色を行い、癌細胞のHLA-E発現を半定量評価するとともに、CD3及びCD56の二重免疫組織染色にて腫瘍浸潤NK細胞を半定量評価した。生存解析で、HLA-E高発現群、NK細胞低浸潤群が予後不良であることが判明し、がん局所のHLA-E発現やNK細胞の浸潤の程度が予後予測のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。続いて、HLA-E発現制御の分子メカニズムの検討を行った。細胞実験にて、IFN-γによる癌細胞膜表面のHLA-Eの発現上昇が明らかとなる一方、経時的に胃癌細胞膜表面のHLA-EがADAM17を介し切断され、培養上清中の可溶性HLA-Eが上昇することを見出した。さらに、この可溶性HLA-Eはin vitroにおいてNK細胞の活性化を阻害することが明らかとなった。最後に、胃癌患者70症例の血液中の可溶性HLA-Eの定量評価を行うと、胃癌のステージが進行するにつれ、血中の可溶性HLA-E濃度が優位に高くなることが明らかとなった。得られた研究成果は、胃癌におけるNKG2A/HLA-E を介したNK細胞の抗腫瘍免疫応答への関与を示唆するとともに、血液中の可溶性HLA-Eのリキッドバイオプシーとしての展望を示す意義のあるものであったと考えられる。
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Annals of Surgical Oncology
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10.1245/s10434-022-11665-3