サリドマイド誘導体である免疫調節薬(IMiDs)は抗多発性骨髄腫活性のある薬剤として臨床でも使用されている。また、特定の患者に対してはIMiDsと共にHDAC阻害剤を併用することで優れた治療効果が発揮されることが明らかとなっているが、IMiDsとHDAC阻害剤の併用によりいかなる特有の機構が生じるのかについてはほとんど分かっていない。本研究では、HDAC阻害剤とIMiDsのコンビネーション抗骨髄腫効果の分子機構解明を目指した。 IMiDsは標的タンパク質CRBNに結合し、CRBNが構成するE3ユビキチンリガーゼ複合体CRL4CRBNによるIMiDs依存的な基質のタンパク質分解を誘導する。Pomalidomide (pom)依存的な基質の一つ、KEYは既報であるメジャーな基質IKZF1/3と比較しマイナーであるが、抗骨髄腫効果を担う基質であることが判明している。多発性骨髄腫細胞にPomと共にHDAC阻害剤を処理した際にKEYのタンパク質量はそれぞれの単剤処理よりも早く・より多く減少したため、KEYに着目してHDAC阻害剤とIMiDsのコンビネーション効果の解明を試みた。 前年度にKEYの下流因子を主にトランスクリプトーム解析により見出していたが、2年目はそれら下流因子及び関連経路についての更なる検証を行った。この結果、SWI/SNF複合体の構成因子が複数ダウンレギュレートされていることを見出した。また、HDAC阻害剤単剤によるKEYの減少はCRBN非依存的であることを見出した。pomによる細胞増殖抑制に非感受性となっている細胞株に関して、KEYをノックダウンしたところ、細胞増殖が抑制されたことからHDAC阻害剤によりKEYを減少させることで、pom非感受性となった多発性骨髄腫についてもKEYが重要であり、薬剤標的として重要であることが示唆された。
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