本研究は、多くの癌でみられ予後不良と関連があるPLK1過剰発現が、1) 相同組替え修復に与える影響、2) PARP阻害剤感受性への影響、を検討するものである。1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響は、TCGA (The Cancer Genome Atlas) データベースを用いbioinformaticsで検討した。TCGA datasetに組替え修復不全を示すHRD scoreを算出し元データにintegrateした上で検討した。これにより多くの癌種においてPLK1 過剰発現が相同組換え修復に及ぼす影響を検討することが可能になった。この検討で、予想通りPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを確認した。次に約1000種類の癌細胞株における遺伝子発現データと抗癌剤感受性データを含むCancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)データベースでも同様にbioinformaticsで検討した。HRD scoreを算出し元データにintegrateした上で検討した。この検討でもPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを確認した。さらにU2OS癌細胞株を用い、PLK1安定過剰発現株を作成し、これを用いた研究で再現性を確認した。2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響は、CCLEデータセットを用いbioinformaticsで検討した。この結果、PLK1過剰発現がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。癌細胞株、だけでなく臨床検体を用いた検討でこれらの結果の再現性を得た。以上の結果から多くの癌で見られ予後不良と相関するPLK1 過剰発現が相同組換え修復を抑制すること、PARP阻害剤に高感受性であることを証明した。
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