研究課題/領域番号 |
20K16320
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
町谷 充洋 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (90759523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二本鎖RNA / 自然免疫応答 |
研究実績の概要 |
近年、内在性二本鎖RNA(double-stranded RNA: dsRNA)に対する自然免疫誘導が、免疫チエックポイント阻害剤によるがん治療の奏功に関与すると報告され始めている。これまでのdsRNA関連の研究は、dsRNAウイルスに関する研究が中心だったこともあり、外部から一過的に導入したdsRNAに対する自然免疫応答の研究が進められてきた。一方で、内在性dsRNAに着目した研究は少なく、内在性dsRNAに対する自然免疫応答、および、その制御機構に関しては未知の領域である。そこで、本研究では、内在性dsRNAを解析する系を構築するために、外部からdsRNAを遺伝子導入するのではなく、独自に細胞内でゲノムからdsRNAを発現する細胞の作製を試みた。まず、レポーター遺伝子としてLuciferase(Luc)遺伝子を発現させると同時に、Tet-ONシステムを用いて、Doxycycline添加時のみLuc mRNAに対するアンチセンスRNAを発現するコンストラクトをレンチウイルスベクターに搭載した。また、導入細胞をセレクションするために、本ベクターにはKusabira-Orange遺伝子も搭載した。次に、本レンチウイルスベクターを増幅・精製し、HeLa細胞に導入した。蛍光顕微鏡でKusabira-Orange遺伝子の発現が観察できたことから、本レンチウイルスベクターによる遺伝子導入に成功したことを確認した。現在、フローサイトメーターを用いて、Kusabira-Orange遺伝子を発現する遺伝子導入細胞をセレクションし、遺伝子導入細胞のスケールアップを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である細胞内でdsRNAを高発現する細胞の作製のための準備が整い、細胞の取得段階にまで到達している。また、hTERTが内在性dsRNAに関わることを示唆するデータを得ており、内在性dsRNAに関わる因子の同定という目的に関しても、進展があった。以上より、おおむね期待通りの成果をあげ、学術的に興味深い研究を進めることができている。また、上記の研究成果をもとに、さらに大きく研究を展開中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、細胞内でdsRNAを高発現する細胞の作製を継続する。昨年までに、細胞内でdsRNAを高発現するためのレンチウイルスベクターを作製した。本年度は、本ベクターを導入したHeLa細胞のセレクション、および、スケールアップを進め、Luc mRNA(センスRNA)の発現、および、アンチセンスRNAの発現を解析する。さらに、細胞内でdsRNAを形成するか検証し、自然免疫応答への影響を解析する。 一方で、昨年度までの結果で、hTERTが内在性RNAの存在様式にに関わることが示唆されたため、hTERTが内在性dsRNAの発現に関わるかを解析する。さらに、hTERTが自然免疫応答に関与するか解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた方法での研究が予定より順調に進んだため、試薬の購入が予定していた量より少なく済んだため次年度使用額が生じた。 成果発表の機会を予定より多くする計画に利用する。
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