R5年度は受容体型チロシンキナーゼVEGFR3の活性の評価法の確立と同定した非定型的リン酸化の機能について検討を行った。 これまで、VEGFR3の非定型的リン酸化がVEGFR3の定型的活性化を抑えると考えられる結果を得ていた。VEGFR3の定型的活性化はそのチロシンリン酸化が指標となる。しかし、これまでそのチロシンリン酸化を検出する方法は確立されていなかった。そこで、本年度はまずVEGFR3のチロシンリン酸化の検出を試みた。様々な濃度のリガンドをVEGFR3過剰発現細胞に作用させたのちに、VEGFR3の免疫沈降を行い、様々な種類のチロシンリン酸化を検出した。しかし、チロシンリン酸化は検出できなかった。他にも様々な工夫を行ったが、VEGFR3のリン酸化を評価する方法を確立することはできなかった。 また、非定型的リン酸化型VEGFR3は抗がん剤への耐性化に関わると考えられる結果をR4年度に得ていた。そこで、その耐性化機構を検討した。VEGFR3を発現させた卵巣がん細胞に対して、抗がん剤を作用させたところ、リン酸化模倣体のほうが非リン酸化模倣体と比べて生存率が上がった。この2つの細胞株の細胞抽出液を比べたところ、細胞増殖に関わるシグナルが異なることがわかった。また、VEGFR3の細胞内局在も変化することがわかった。これらの結果により、リン酸化の有無により、細胞内局在が変化することで細胞増殖を制御することが示唆された。
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