研究課題
機械的刺激伝達シグナルおよび組織硬度がデスモイド型線維腫症の病態において果たす役割について検証することを目的としている。デスモイド型線維腫症細胞におけるメカノレセプター発現確認および基質硬度の変化によるタンパク発現の変化の調査に使用する初代培養細胞が枯渇したため、新規細胞培養を行ったが実験に使用できる状態のものを得ることができず、令和4年度の基礎研究からのアプローチは進捗を得られなかった。臨床的知見からのアプローチとして、デスモイド型線維腫症に対する保存的治療の臨床成績および画像上の増大・治療介入に至るリスクの検討を行った。デスモイド型線維腫症は手術による再発率が高いと報告されている一方、経過観察のみで縮小する可能性もあるため、近年治療の第一選択肢は手術でなく監視療法となっている。しかしその治療成績の報告は少なく、特にアジア諸国からの大規模な研究報告は存在しない。当院において半年以上の経過観察が可能であった168病変を対象として検討を行い、168病変中44%に当たる74病変で治療介入が行われていた。機械的刺激や基質硬度に関連すると考え発生部位による増大や治療介入リスクの差異を検討し、頸部発生例では画像上の増大とは有意な関連を示さなかったが、他の部位と比較し有意に治療介入に至るリスクが高かった。他の治療介入リスクとしてはCTNNB1 S45F変異を持つ例が単変量・多変量解析ともに治療介入リスクであった。この結果はアジアからの報告として最大であること、また頸部が治療介入のリスクであることを示唆することができ、有用な報告であると考える。本研究成果は、国際科学誌『Cancer Medicine』に掲載された。
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