研究課題
作成・樹立していた小細胞肺癌H69AR・Neogenin遺伝子欠損細胞株にRNA-seqを行った。解析の結果、有意な発現差異が認められた遺伝子群の中でも、Protocadherin(PCDH)7やβ9等細胞接着に関与する遺伝子群が特に優位な発現増加を認めた。H69ARのコントロール群とNeogenin遺伝子欠損細胞株群を用いたCell Invasion assayではコントロール群と比較してNeogenin遺伝子欠損細胞株群で浸潤能が増加する傾向が認められた。一方で、FEZ1やNTN1等、細胞増殖に関与する遺伝子群での発現低下も認められた。H69ARのコントロール群とNeogenin遺伝子欠損細胞株群を用いた細胞増殖試験では、コントロール群と比較してNeogenin遺伝子欠損細胞株群で細胞数が減少する傾向が認められた。Decoy 蛋白質の大量投与実験は昨年度分は終了し、蛋白発現の解析を行うことができた。sysmex社に依頼し、作成・精製したNeogeninの細胞外ドメインであるImmunoglobulinドメイン(IGD)及びFibronectinドメイン(FND)をdecoy蛋白質としてH69ARに大量投与実験を行った。結果として、細胞接着に関与するFocal adhesion kinase(FAK)やリン酸化FAKの発現減少やアポトーシス因子であるCaspase8やCaspase9、ストレス応答性MAPKであるJNKやcAMP応答配列結合タンパク(CREB)の変化等多数の蛋白で発現変動が認められた。また、Decoy蛋白と並行して、Draxin-Reconbinant proteinの大量投与実験を行った。結果、JNKの発現低下や熱ショックタンパク質であるHSP27の発現低下等が認められた。
2: おおむね順調に進展している
RNA-seqによるNeogenin遺伝子欠損細胞株の解析は昨年度中に完了できた。Neogenin遺伝子欠損細胞株に対するDecoy 蛋白質の大量投与実験は昨年度分は終了し、蛋白発現の解析を行うことができ、現在評価中である。またDecoy蛋白と並行して、Draxin-Reconbinant proteinの大量投与実験を行い、Draxinの過剰投与下による小細胞肺癌への影響も蛋白解析を通して解析中である。Draxin-22-amino-acid peptideの精製は完了しており、今年度には実験を行うことができる状態である。Draxin遺伝子欠損マウス及びNeogenin遺伝子欠損マウスは継代を続けているが、目的の遺伝子を完全に欠損したマウスは成長過程での死亡してしまう傾向がり、実験に必要な匹数が揃えることが難しい状況である。
H69ARのRNA-seq解析に続いて、別の小細胞肺癌細胞株SBC5を用いたNeogenin遺伝子欠損株のRNA-seqを今年度中に完了する予定である。またH69AR・Draxin遺伝子欠損細胞株やSBC5・Draxin遺伝子欠損細胞株を用いたRNA-seqもサンプルの遺伝子発現を確認次第、解析に回していきたい。H69AR・Neogenin遺伝子欠損細胞株に対するDecoy 蛋白質の大量投与実験を行ったサンプルは蛋白解析を引き続き続けるとともに、RNA-seqやリン酸化蛋白の解析を行う予定である。またSBC5・Neogenin遺伝子欠損細胞株を用いたDecoy 蛋白質の大量投与実験とその蛋白解析もサンプル量が許す限り行って比較検討したい。Decoyt蛋白投与実験と並行してDraxin-Reconbinant proteinの大量投与実験やDraxin-22-amino-acid peptide によるガイダンス分子-受容体結合への影響を解析していく予定である。Draxin遺伝子欠損マウス及びNeogenin遺伝子欠損マウスの作成も引き続き行っており、実験頭数分が確保できれば、小細胞肺癌株とDraxin、Neogenin 遺伝子欠損細胞株の皮下移植を行う。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Diagnostics
巻: 10 ページ: 949
10.3390/diagnostics101109