研究課題/領域番号 |
20K16334
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 陽之輔 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (00823311)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発癌 / 小細胞肺癌 / 神経ガイダンス分子 / Draxin / Neogenin |
研究実績の概要 |
作成・樹立していた小細胞肺癌SBC5・Neogenin遺伝子欠損細胞株にRNA-seqを行った。解析の結果、有意な発現差異が認められた遺伝子群の中でも、細胞-細胞間接着に関わる遺伝子群の発現が上昇していることが判明した。SBC5のコントロール群とNeogenin遺伝子欠損細胞株群を用いたCell Invasion assayではコントロール群と比較してNeogenin遺伝子欠損細胞株群で浸潤能が優位に減少する結果が得られた。腫瘍細胞の浸潤能以外に増殖能の変化も確認したが、SBC5のコントロール群とNeogenin遺伝子欠損細胞株群を用いた細胞増殖試験では、コントロール群と比較してNeogenin遺伝子欠損細胞株群で細胞数の有意な変化は認められなかった。 作成・精製したNeogeninの細胞外ドメインであるImmunoglobulinドメイン(IGD)及びFibronectinドメイン(FND)をdecoy蛋白質としてH69ARコントロール群とNeogenin遺伝子欠損群への大量投与実験を引き続き行い、上皮の形態形成や上皮間葉転換に関与するSnailの発現がコントロール群で変動が認められなかったのに対して、Neogenin遺伝子欠損群では有意に減少が認められた。 decoy蛋白の投与実験と並行してDraxin-Reconbinant proteinの大量投与実験を行い、H69AR遺伝子欠損株では、投与量の増加に依存してapoptosisに関連するCaspase9の発現低下や細胞増殖に関連するBcl-2の発現増加が認められた。また細胞接着因子のphospho-focal adhesion kinaseの発現低下、及びN-cadherinの発現増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H69AR及びSBC5遺伝子欠損細胞株に対するDecoy 蛋白質の大量投与実験は年度分は大半は使い切ってしまった。蛋白発現の解析を現在も評価中である。再現性なども含めて十分なサンプル数の確保に努めているが、蛋白精製量などの問題で、年度内に実験できる量は限られている。 またDecoy蛋白と並行して、Draxin-Reconbinant proteinの大量投与実験を行い、Draxinの過剰投与下による小細胞肺癌への影響も蛋白解析を通して解析中である。H69AR株を中心に実験を行ってきたが、SBC5株でも実験を行う予定である。Draxin-22-amino-acid peptideの精製は完了しており、今年度には実験を行うことができる状態である。 Draxin遺伝子欠損マウス及びNeogenin遺伝子欠損マウスは引き続き継代を続けているが、目的の遺伝子を完全に欠損したマウスは成長過程での死亡してしまう傾向があり、実験に必要な匹数が揃えることが難しい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
H69ARとSBC5を用いたNeogenin遺伝子欠損株のRNA-seqを昨年度中に完了することができたので、現在変動した蛋白や機能の解析を行っている。可能であれば、H69AR・Draxin遺伝子欠損細胞株やSBC5・Draxin遺伝子欠損細胞株を用いたRNA-seq、またはDecoy蛋白投与後のH69ARコントロール群とNeogenin遺伝子欠損株群のRNA-seq解析による詳細な蛋白の変動を確認したいと考えている。 SBC5・Neogenin遺伝子欠損細胞株に対するDecoy 蛋白質の大量投与実験を行ったサンプルは蛋白解析を引き続き続けるとともに、リン酸化蛋白の解析を行う予定である。またSBC5・Neogenin遺伝子欠損細胞株を用いたDraxin-reconbinant proteinの大量投与実験とその蛋白解析も検討したい。またDraxin-22-amino-acid peptide 投与によるガイダンス分子-受容体結合への影響解析も検討したい。 Draxin遺伝子欠損マウス及びNeogenin遺伝子欠損マウスの作成も引き続き行っており、実験頭数分が確保できれば、小細胞肺癌株とDraxin、Neogenin 遺伝子欠損細胞株の皮下移植を行う。
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