【研究意義・重要性】 EGFR遺伝子T790M変異による薬剤耐性化が臨床上大きな問題となっている。T790M変異は二次的な薬剤性遺伝子変異と言われているが、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤未治療のEGFR遺伝子変異陽性肺癌でもT790M変異陽性例が存在する。よって通常のPCR検査では検出限界以下のため検出されない微量なT790M変異を有する可能性がある。本研究では、EGFR遺伝子変異肺癌切除検体中のT790M変異の頻度や変異率を調査し、予後不良因子となりうるかについて検討する。また極微量の遺伝子変異検索が可能なCAST-PCRなどを用いて微量なT790M変異の新たな検出法確立を目指す。本研究で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の正確な治療効果予測やEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を含めた肺癌治療がより適切に選択できるようになる可能性があり、肺癌の予後を改善させることができる可能性があると考える。 【当該年度に実施した研究実績】 1977年から2019年までのEGFR遺伝子変異肺癌切除検体中、ダイレクトシークエンス法でT790M変異を検出しえたのは1例であったのに対し、CAST-PCR法では、T790M変異陽性率は210例中66例で31.4%であり、微量なT790M変異を認めた。さらに臨床的背景、術後再発率、術後生存率を調査した。カプランマイヤー、Log rank testを施行した所、微量T790M変異の有無によって術後再発率および術後生存率に有意差は認めなかった。さらに再発時に投与された分子標的薬の種類(ゲフチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ)によっても生存率に有意差は認めなかった。 【結論】EGFR-TKI未治療肺癌の31.4%に微量なT790M変異を認めた。微量なT790M変異の有無で再発率や生存率に差は認めなかった。
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