研究課題
臨床の現場で遭遇する異常疼痛には神経障害性疼痛、あるいは炎症性疼痛や、悪性腫瘍の浸潤による癌性疼痛が知られている。近年、三叉神経脊髄路核尾側亜核のマイクログリアを介した疼痛発症メカニズムが神経障害性疼痛や炎症性疼痛に関与しているとの報告がある。このグリア-神経細胞関連のメカニズムをより深く解明し、舌癌の進展に伴う三叉神経脊髄路核尾側亜核におけるP2受容体を介したグリア-神経機能連関の変調を明らかにし、これまでの研究結果と併せて癌性難治性異常疼痛に対する新規治療法の開発につなげることを目的とし、今回は舌癌モデルラットにおいて三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)に発現するP2X7受容体ならびにPannexin1(Panx1)がいかなるメカニズムで舌癌性疼痛発現に関与するかを検討した。ラット舌へ癌細胞接種後6日目以降、機械刺激に対する舌逃避反射閾値(MHWT)の有意な低下が認められたが、Panx1アンタゴニスト(10panx)投与により低下は抑制された。接種後14日目、Vcの表層においてIba1陽性細胞にPanx1発現とpERK陽性細胞の増加を認めたが、10panx投与により減少した。SCC細胞接種群において接種後14日目にVcニューロン活動が亢進し、10Panx投与により抑制された。またP2X7受容体拮抗薬の大槽内持続投与によってMHWTの上昇およびpERK陽性細胞数の減少、さらにnaiveラットにP2X7受容体の作動薬であるBzATPを投与することによりMHWTの低下およびpERK陽性細胞数の増加が認められた。これらにより舌癌性疼痛発現時には、Vcの表層に出現した活性型マイクログリアにおいてPanx1が発現し、このチャネルを通して放出されたATPが侵害受容ニューロンのP2X7受容体に結合することによって侵害受容ニューロンの活動が亢進し、舌癌性疼痛が発症する可能性が示された。
すべて 2021
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Int J Mol Sci.
巻: 22 ページ: -
10.3390/ijms222111404