研究課題/領域番号 |
20K16343
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
武田 朋也 近畿大学, 薬学部, 助教 (20734031)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | トリプルネガティブ乳癌 / 骨転移 |
研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、早期に肺や骨などの遠隔転移を認める予後不良の悪性腫瘍である。特に、骨転移はTNBC患者の予後を著しく悪化させる要因となっている。骨転移の成立には、TNBCと骨髄間質細胞との相互作用が重要であるが、その詳細な機序は不明である。本研究は、TNBCと骨髄間質細胞との相互作用に関する分子機構を解明することで、TNBC骨転移を抑制する新たな治療法を見出し、TNBC患者の予後改善につなげる基礎研究が目的である。 令和2年度は、TNBCと骨髄間質細胞との相互作用に関与する因子を明らかにするために、TNBC骨高転移株を作成した。また、作成したTNBC骨高転移株と骨髄間質細胞を共培養することで、遊走能及び浸潤能の亢進を認めた。次に、骨髄間質細胞と相互作用する因子について解析したところ、数種の受容体がTNBC骨高転移株で発現増加することを見出した。さらに、発現増加を認めた受容体のリガンドを添加することで、TNBC骨高転移株の遊走能及び浸潤能が亢進することを明らかにした。以上のことから、TNBC高転移株で高発現する受容体が骨髄間質細胞と相互作用することで、骨への遊走能及び浸潤能亢進に関与する可能性が考えられる。 令和3年度は、令和2年度で見出した受容体の阻害剤を用いて、TNBC骨高転移株の遊走能及び浸潤能が抑制されるか、in vitroで検討する。さらに、in vitroで効果が認められた阻害剤を使用して、in vivoで骨への転移を抑制するのか明らかにしていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は研究計画通り、TNBC骨高転移株と骨髄間質細胞との相互作用に関与する因子の解析を行った。その結果、TNBC骨高転移株において、数種の受容体で発現増加を認め、骨髄間質細胞と相互作用することを見出した。さらに、TNBC骨高転移株で発現増加を認めた受容体の阻害剤により、遊走能及び浸潤能を抑制する結果も得ている。これらのことから、研究計画通り、おおむね順調に進行していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度で同定した受容体に対するsh-RNAもしくは阻害剤を用いて、遊走能及び浸潤能が抑制されるか検討する。さらに、上記検討で抑制効果が認められた因子に対する分子標的薬を用いて、in vivoでTNBCの骨転移を抑制するか明らかにしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表するために参加予定していた学会がコロナウィルスの影響で参加することができないために繰越金が発生した。この繰越金については次年度の学会参加で使用する予定である。
|