研究課題/領域番号 |
20K16348
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
木村 基 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター, 臨床研究センター 産学連携推進部部 部長 (50861647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 膵癌 / 無菌マウス / メタゲノム解析 / ヒトフローラマウス |
研究実績の概要 |
膵癌患者からの腸内細菌を定着させたモデル動物を作出するために、NOG/Jic(NOD/Shi-scid,IL-2RγKO)マウス(NOG マウス)を無菌化を試みた。まずNOGマウスを帝王切開を行い無菌の状態で子マウスを摘出し飼育した。これらの無菌NOGマウスを繁殖させた後、健常人あるいは膵臓癌患者に特徴的な腸内細菌種を移植するために、それぞれの糞便を無菌NOGマウスに経口投与し、健常人あるいは膵臓癌患者に特有な腸内細菌叢を定着させたノトバイオートマウスモデルを作出した。無菌NOGマウス群(normal群)、無菌NOGマウスに健常人の腸内細菌種を移植したマウス群(control群)、無菌NOGマウスに膵臓癌患者の腸内細菌種を移植したマウス群(PCH群)の3群に分類し、すべてのマウスに対してヒト膵臓癌細胞(PAM-04-JCK腫瘍株)を移植した。移植日より約30日間、無菌アイソレーター内で飼育し、週に1度一般状態、腫瘍の大きさを観察した。一般状態変化として、無菌NOGマウスに比べ健常者ならびに膵臓癌患者の腸内細菌を定着させたマウスは軽度の粗毛が観察された。Control群とNormal群の比較において、Normal群では腫瘍の増殖速度が早い傾向が観察された。PCH群とControl群あるいはNormal群の比較では、腫瘍の増殖速度に大きな違いは見られかった。PCH群においては、ヒト腸内菌叢定着後4週目以降で、6匹死亡が確認された。使用したPAM-04-JCK腫瘍株の採材適期が40日-60日であるため、腫瘍増殖期間を十分に確保することはできなかった。PCH群では、血液の培養検査や塗抹標本から、グラム陰性桿菌が検出されており菌血症であった可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初想定していたモデル動物では、膵癌患者の常在細菌を定着することによる影響で死亡してしまうことから、他のモデル動物の変更を検討する必要が生じた。この死亡した理由は、本来観察すべき癌の発生に関する要因とは関連がないと判断している。 別途、膵癌のマウスモデルとして報告のある、B6.FVB-Tg(Pdx1-cre)6Tuv/JマウスとB6.129S4-Kras<tm4Tyj>/Jマウスを掛け合わせモデル動物を作成する。本モデルにおいても、膵癌関連菌種を定着させるために、無菌化した膵癌モデルマウスを作成する期間が必要となり、10カ月程度の遅れが生じると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初想定していたNOGマウスを用いたヒトフローラマウスモデルにおいては、本来観察すべき膵癌に関する影響を観察する前に、膵癌患者の常在細菌を定着することによる影響で死亡してしまうことから、他のモデル動物の変更を検討する必要が生じた。この死亡した理由は、膵臓癌患者の由来の特定の菌による菌血症の影響であると考えられる。 今後は、膵癌の前がん病変が自然に生じるマウスモデルとして報告されているB6.FVB-Tg(Pdx1-cre)6Tuv/Jマウス及びB6.129S4-Kras<tm4Tyj>/Jマウスを掛け合わせモデル動物を作成し、無菌動物した後、膵臓癌患者由来の菌を定着させることにより、菌の膵臓癌発達に関する影響を観察する予定である。一方で、膵癌患者の唾液及び糞便検体より、先行研究で明らかにした膵臓癌に関連が強い菌種の単離する。これらの単離した菌のゲノム情報と先行研究で得られているゲノム情報を比較し、関連菌種の同定を試みる。単離した膵癌関連菌種をモデル動物に定着させた後、モデル動物における前がん病変から膵癌に至る過程を観察することで、菌と膵臓癌の関連を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度使用しなかった研究費が生じたため、翌年度分に繰り越した。菌の分離培養、ゲノム解析及び菌の性状に関する試験の費用と、モデル動物作成に係る費用として使用する予定。
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