がん骨転移による骨破壊は様々な骨関連事象を引き起こし、患者QOLの低下につながるため、早期発見・治療が重要だが、骨転移のメカニズムはいまだ十分には解明されていない。近年、細胞から分泌されるエクソソーム中のmiRNAが生体機能に様々な影響を及ぼし、がん骨転移や骨破壊にも関与していることが示唆されている。本研究の目的は、がん骨転移における骨破壊や破骨細胞活性におけるmiRNAの影響を検討する事である。 ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231にGFP(コントロール)、miR-16、-133a、-223をプラスミド導入し、各導入細胞の培養上清(miR-CM)中の溶骨性因子の発現をReal-time PCRで評価した。MDA-MB-231細胞における溶骨性因子の発現は、miR-16-CMで上昇し、miR-133a-CM、miR-223-CMで低下を認めた。またRAW264.7細胞株でのRANKL刺激による破骨細胞分化課程において、各miR-CMでの培養を行った所、miR-16-CM添加群で破骨細胞活性が高く、形態も維持される傾向を認めた。また、象牙培地上で破骨細胞を培養し、吸収窩を測定するBone resorption assayを行い、骨吸収能は,miR-16-CM存在下で上昇、miR-133a/223-CM存在下では低下を認めた。In vivo では、miRNAを導入した乳癌細胞を6週齢ヌードマウスの脛骨近位に移植し,骨転移モデルを作成し、4週後に骨破壊の程度をμCTや組織学的(HE、TRAP、免疫染色)に評価を行い、miR-16群で溶骨性因子の発現を強く認め、骨破壊像が顕著な傾向を認めた。本研究の結果から、miR-16が、がん骨転移における骨破壊を増悪させ、miR-133a、miR-223は抑制的に作用する可能性が示唆され、バイオマーカーや治療標的としての活用できる可能性が示された。
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