前年度に引き続き、ヒトBリンパ腫細胞株を皮下移植した免疫系ヒト化次世代免疫不全マウスに抗CD20抗体と抗ヒトSIRPα抗体を2週間併用投与し、腫瘍内ヒトマクロファージの特性について解析した。その結果、腫瘍細胞に対する貪食は抗CD20抗体単独投与でも上昇していたが、併用投与ではさらに上昇していたことから、前回記述したin vitroでの結果と同様にin vivoでも抗ヒトSIRPα抗体によるヒトマクロファージのADCP増強が起こっていることが示された。また、移植腫瘍から単離したマクロファージのRNA-seq解析を行ったところ、併用投与群では、いくつかの炎症系サイトカインのmRNA発現が上昇していた。同時にマルチプレックス抗体アッセイを用いてマウス血清中のサイトカインを定量したところ、同様の炎症系サイトカインが上昇していたことから、併用投与は腫瘍内ヒトマクロファージの活性化を引き起こし、炎症性サイトカインの発現上昇を誘導することが示唆された。 抗ヒトSIRPα抗体の奏功性をPDXモデルでも評価するため、Bリンパ腫患者由来の腫瘍サンプルを免疫系ヒト化マウスへ移植し、生着効率について検討を行った。さらに、上記と同様に抗体の併用投与を行ったところ、抗ヒトSIRPα抗体による抗腫瘍効果の増強を示唆するデータを得た。このPDXモデルを用いることによって、抗ヒトSIRPα抗体をはじめとするヒトマクロファージを対象とした薬剤の奏功性についてより臨床に近い知見が得られることが期待される。
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