マウスの脾臓内へ膵癌細胞を移植する血行性肝転移モデルを用い、肝臓内での膵癌細胞と血管との相互関係や時間経過での変化について、2光子励起顕微鏡によって観察する。 7週齢、108週齢の雄性C57BL/6マウスを用い、イソフルラン吸入麻酔下にて脾臓を体外へ露出し、70kDa Dextranとマウス膵癌細胞株 (GFP発現、Hoechst染色済)の混合液0.1 mLを脾臓内へ注入した。注入後30分以内に体外へ露出した肝臓を吸引型マウス固定装置(吸引圧約30mmHg)にて吸引固定して視野を確保した。2光子励起顕微鏡にて70kDa Dextranで描出された肝臓の血管内にマウス膵癌細胞が観察できた。観察開始から2分ごとのタイムラプス動画を0.5~1時間撮影し、マウス膵癌細胞の動きを観察した。今回の観察では、7週齢、108週齢のマウス共に、脾内移植した癌細胞は、血流にのって肝臓までは流れてきたが、肝内では血管内に留まり、ほとんど動かずに血管壁に留まっている癌細胞が多く観察できた。さらに、肝臓表面から100μmの深さまでの3D画像を取得し、血管分岐と癌細胞がその血管内にどれくらいとどまっているのかを評価した。その結果、7週齢と108週齢のマウスを比較すると、7週齢のマウスのほうが肝臓内に留まっている癌細胞が多かった。肝臓内の血管を週齢にて比較してみると、肝臓全体の血管としては108週齢のマウスの血管のほうが、7週齢のマウスの血管よりも太く、血管の分岐も多く認められた。これらの特徴が膵癌における血行性肝転移の成立のしやすさに関与している可能性がある。
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