研究課題/領域番号 |
20K16361
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
千々岩 芳朗 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60783701)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵星細胞(PSC) / 膵癌 / 癌間質相互作用 / Erap2 / オートファジー |
研究実績の概要 |
膵癌は過剰な癌間質増生を特徴としており、癌間質相互作用によって癌の進展を促進していると考えられている。間質は主に膵星細胞(PSC)よりなるが、PSCはその状態により腫瘍の進展・抑制それぞれに作用することが報告されており、本研究は腫瘍促進性PSCから抑制性PSCを誘導することで膵癌進展を抑制することを目標に開始された。 まず、膵癌患者と慢性膵炎患者由来のPSCを形態学的に比較したところ、膵炎由来のPSCは球状で脂肪滴が多く、紡錘形の膵癌由来PSCとは異なっていた。オートファジーとコラーゲンのレベルは、膵炎由来PSCよりも癌関連PSCの方が高く、癌関連PSCの活性化レベルが高いことを示唆していると考えられた。 膵癌患者由来、慢性膵炎患者由来それぞれのPSCに対して遺伝子発現マイクロアレイ分析を行ったところ、癌関連PSCにおいては小胞体アミノペプチダーゼ2(Erap2)がアップレギュレートされていることが確認された。さらにPSCでErap2をノックダウンしたところ、mRNAレベルとタンパク質レベル双方でα-SMA発現を含むPSC活性化マーカーの発現低下が観察され、PSCが静止状態へ変換されたと考えられた。加えて、LC3-IIのレベルの低下とp62のレベルの上昇も見られた。 以上からは、オートファジー活性とそれに続くPSCの活性化がErap2ノックダウンによって阻害されることが示唆され、Erap2はオートファジーを介したPSC活性化で機能すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌患者由来のPSCと慢性膵炎患者由来のPSCを比較することで、形態学的な違いや癌由来PSCに特異的な遺伝子発現を特定することができた。その中でも癌由来PSCにアップレギュレートされていたErap2に着目することで、腫瘍促進性PSCを静止状態へと変換することも可能であることが分かり、計画②の「PSCを腫瘍促進性から抑制性へと誘導する」ことがin vitroレベルで実現できたと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、PSCの機能的変化を確かめるべく、Erap2をノックダウンしたPSCの形態学変化やサイトカイン分泌を確認するとともに、膵癌細胞株と共培養を行って膵癌細胞の浸潤能、遊走能を確かめる。 更にはマウスにErap2ノックダウン有無別のPSCと膵癌細胞を同時移植し、移植腫瘍の増大や腫瘍形態の違いを確かめることで、Erap2がPSCの腫瘍促進・抑制能にもたらす影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、ほぼ予定通りに使用している。 次年度は研究用器材、試薬などに使用し、in vitroの実験を進めていく予定である。
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