膵癌は過剰な癌間質増生を特徴としており、癌間質相互作用によって癌の進展を促進していると考えられている。間質は主に膵星細胞(PSC)よりなるが、PSCはその状態により腫瘍の進展・抑制それぞれに作用することが報告されており、本研究は腫瘍促進性PSCから抑制性PSCを誘導することで膵癌進展を抑制することを目標に開始された。 昨年度までに、Erap2をノックダウンすることがPSCを静止状態へ変換しうることを示してきた。 本年度は、PSCでErap2をノックダウンすることでPSCからのフィブロネクチンの産生およびインターロイキン6の分泌が減少し、それにより、膵臓癌細胞の浸潤性に対するPSCの促進効果が弱められることを示した。同所性モデルでは、PSCのErap2ノックダウンは、Erap2ノックダウンのないPSCの同時移植と比較して、異種移植腫瘍の成長と線維化レベルを抑制した。以上より、PSCのオートファジーはErap2によって制御されており、Erap2はER由来のオートファジーを介してPSCの活性化も制御していることが示唆され、原著論文として発表した。 更に膵オルガノイド(PDO)にTMEがもたらす影響の検討を行ったところ、PDOの分化型は癌関連線維芽細胞が分泌するニッチ因子によってその表現型が維持されることが示され、高分化型PDOはニッチ依存性と相関するメバロン酸経路関連遺伝子の発現をアップレギュレーションしていることも示された。以上の結果は新たな膵癌サブタイプ分類ベースの治療戦略の開発につながる可能性があるとして、原著論文として発表した。
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