神経芽腫は小児期における代表的な悪性固形腫瘍の一つであるが、しばしば非常に治療抵抗性であり、現在も新たな治療薬の開発を求められている。我々はこれまでに、予後良好な神経芽腫に高発現する遺伝子としてSrc homology 2 domain containing F (Shf) を同定し、anaplastic lymphoma kinase (ALK) と結合してその下流シグナルを抑制することを発見した。このShfが予後良好な神経芽腫に高発現する神経成長因子受容体TrkAと結合して神経分化を促進することに注目し、TrkAと同じTrkファミリー受容体であり、かつ予後不良な神経芽腫に高発現するTrkBとShfとの機能相関についての研究を立案した。すなわち、SH-SY5Y細胞を用いて、ShfとTrkBタンパク質相互作用を近接ライゲーションアッセイ (Proximity Ligation Assay; PLA) により検証した。まず、予備試験として、Shf-TrkB PLAに使用する一次抗体の検討を行った。続いて、本試験として、予備試験で決定した一次抗体条件を用いて、未分化SH-SY5Yとレチノイン酸 (RA) で分化させたSH-SY5Y (RA分化SH-SY5Y) におけるShf-TrkB PLAシグナル比較を行った。いずれの細胞においても、Shf-TrkB PLAシグナルが検出された。さらに、TrkBの発現が高いと予想されるRA分化SH-SY5Yにおいて、未分化SH-SY5Yよりも、Shf-TrkB PLAシグナルが有意に高かった。以上のことから、SH-SY5Y細胞において、ShfとTrkBは相互作用をするタンパク質であることが示唆された。
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