研究課題
患者癌移植モデル(以下、PDX)は患者癌の特徴を反映した前臨床モデルとして期待されているが、転移形成率が非常に低いことより、抗転移薬の開発や浸潤・転移の研究が困難であった。これまで申請者らは実験的転移モデルの作製のため、9症例の患者から採取した大腸癌細胞を高度免疫不全NOD/Shi-scid, IL-2RγKO(NOG)マウスの脾臓へ注入し、7例で肝臓にマクロな転移巣を形成した。さらに、浸潤から転移コロニー形成までの多段階の浸潤・転移のプロセスを可視化するために、レンチウイルス由来のGFP発現ベクターが導入された大腸癌細胞オルガノイドを樹立し、浸潤・転移にかかわる細胞動態を蛍光顕微鏡下で観察した。GFP陽性大腸癌オルガノイドが同所移植されたPDXモデルでは、GFP陽性癌細胞が肺で多数検出され、可視化された患者大腸癌の自発的肺転移モデルとなりえることがわかった。今後はGFP陽性大腸癌オルガノイドを用いたPDXモデルを用いて、薬剤の抗腫瘍効果の検討や転移の生物学的研究を進めていきたい。現在まで8例の大腸癌PDXモデルおよびオルガノイドを樹立した。各オルガノイドにおいて転移形成能や上皮間葉移行の程度が明らかにされた。今後は化合物ライブラリーをこれらのオルガノイドに処理し細胞死が誘導される化合物を同定する。またその化合物が抑制する遺伝子やシグナルと転移形成能や上皮間葉移行との関連性を調査する予定である。
2: おおむね順調に進展している
現在まで8例の大腸癌PDXモデルおよびオルガノイドを樹立した。各オルガノイドにおいて転移形成能や上皮間葉移行の程度が明らかにされた。増殖の遅い癌もあったが、大体の癌の生着や増殖がみられた。
今後は化合物ライブラリーをこれらのオルガノイドに処理し細胞死が誘導される化合物を同定する。またその化合物が抑制する遺伝子やシグナルと転移形成能や上皮間葉移行との関連性を調査する予定である。
新型コロナウイルス感染対策の為、NOGマウスに癌オルガノイドを移植予定であったが、その実験が延期になったため。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
International Journal of Cancer
巻: 146 ページ: 2547-2562
10.1002/ijc.32672