研究課題/領域番号 |
20K16372
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
鈴木 潤 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, レジデント (80869933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺胞マクロファージ / がん関連線維芽細胞 / 腫瘍関連マクロファージ / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
本研究の一部の成果は既に論文発表されている(Relationship between podoplanin-expressing cancer-associated fibroblasts and the immune microenvironment of early lung squamous cell carcinoma. Lung Cancer. 2021 Mar;153:1-10)。Podoplanin陽性がん関連線維芽細(PDPN+ CAFs)を含む肺扁平上皮癌組織では腫瘍抑制的に働くサイトカイン遺伝子の発言が亢進していることがTCGAを用いた解析で明らかになった。実際にヒトの肺扁平上皮癌より分離・培養されたCAFsからPDPN CAFsをsortingして解析すると、TGF-β1発現の亢進が認められた。実際にヒト肺扁平上皮癌切除例、131例を用いて検討したところ、PDPN+ CAFsを含む検体では腫瘍促進的な腫瘍関連マクロファージ(TAMs)が有意に多く認められ、さらにはPDPN+ CAFsの周囲にTAMsがより多く集積する傾向が認められた。
本研究では明らかにされたことは次の様なことである。①非小細胞肺癌において、podoplanin陽性がん関連線維芽細(PDPN+ CAFs)胞は腫瘍促進的なTAMsの集積と相関していることが示された。②in vitroの実験において、PDPN+ CAFsでは免疫抑制的な腫瘍微小環境に関わるサイトカイン遺伝子発現の亢進が認められた。現在はCAFsとTAMsの間にどのような相互作用が働いているのか、そのメカニズムを明らかにすることが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、CAFsとTAMsの間にどのような相互作用が働いているのかを明らかにするために、肺胞由来の単球/マクロファージを分離して培養し、がん関連線維芽細胞(CAFs)と共培養を行う系の確立を目指しているが、まだ安定した系を確立するに至っていない。
一方で、肺の非小細胞肺癌検体を用いた空間トランスクリプトーム解析を行い、がん関連線維芽細胞(CAFs)と腫瘍関連マクロファージの間の関連をべている。
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今後の研究の推進方策 |
肺胞由来の単球/マクロファージを分離して培養し、CAFsとの共培養を行う系の確立を目指しているが、まだ安定した系を確立するに至っていないことが一番の課題である。健常人由来の末梢血から単球/マクロファージを採取する方法が報告されているが、これを行うためには手続き上や研究体制上の課題をクリアする必要があり、現在検討している最中である。
共培養系の確立が難しいときは別の方法でCAFsとTAMsの相互作用を別の観点から明らかにしていく必要がある。その一つとして空間トランスクリプトーム解析を施行中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスクリプトーム解析を予定しており、それに費用を要する可能性がある。
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