近年の乳がんにおける診断・治療技術の発展は乳がんの予後を大きく改善したが、いまだに予後の悪いタイプの乳がんが、一定数で存在するのも事実である。一方で、人工知能などを用いた革新的デジタル医用技術は急速なスピードで発展を遂げており、中でも画像診断および病理診断分野においてその向上は著しいものがある。それ以外の医学研究分野においても、人工知能などのデジタル技術を応用した新たな医学研究が多く進められてきている。そこで我々は、日本乳腺人工知能研究会において、乳がん診療のさらなる向上のために革新的デジタル技術を用いた乳がんの診断・治療に関する研究を今後のどのような形で進めていくべきか、多くの若い先生方と話し合いを続けている。医療現場における乳がんの診断・治療には、乳がんにおける分子生物学的特徴を理解することはもちろんのこと、選択された手法に関して、そのリスクやベネフィットを含めた臨床腫瘍学に関しての豊富な知識と経験が必要とされる。しかし、現実の問題としてそれを的確に行うことができる専門家は世界各国で未だ不足している状況である。われわれは、人工知能などのデジタル技術を用いた革新的医療技術の臨床的信頼性を検証し、乳癌診療におけるリソース不足を解消するための新しい医療ネットワークの構築を目指している。このことは偏在化した地域医療や発展途上国における医療の均てん化につながると考えている。少しでも多くの人々が安心した人生を送れるように、医療従事者、医学者の方々は、診療、研究、教育に懸命に従事している。デジタル医用技術を用いることにより、日々多様化していく乳がん診療の中で、医療従事者と患者さんが共に無理のない形で乳がん診療を進めていける環境を創造するために、新しい時代の乳がん診療にむけて、デジタルトランスフォーメーションをどのように進めていくべきか検討を進めている。
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