本研究は、肺神経内分泌腫瘍におけるINSM1蛋白発現と臨床病理学的特徴の関係性を評価し、細胞株における発現も調べ、INSM1の肺神経内分泌腫瘍の診断マー カーとしての有用性を検討するものである。 今年度は、引き続き、多施設での(1)原発性肺癌(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞神経内分泌腫瘍(LCNEC)、カルチノイド)におけるINSM1の 蛋白発現を免疫染色により評価した。(2)肺癌細胞株(小細胞癌、 腺癌)を用いて、セルブロックを作成し、免疫染色法とウェスタンブロット法にてINSM1の 蛋白発現ついて検討した。 その結果、多施設においても(1)原発性肺癌における切除検体のINSM1の蛋白発現は、肺腺癌では10%以下、肺扁平上皮癌では10%以下で陽性であり、肺小細 胞癌では90%以上 が陽性、LCNECでは60%以上が陽性、カルチノイドでは90%以上が陽性であり、神経内分泌腫瘍にINSM1が特異的に発現していることが示唆された。(2)細胞株 実験において、INSM1は腺癌細胞株では免疫組織化学染色法・ウエスタンブロット法ともにほぼ全例陰性であったが、小細胞肺癌株ではINSM1は免疫組織化学染色 法・ウエスタンブロット法ともに80%程度で陽性であった。 今後は、症例数を増やした小細胞肺癌、非小細胞肺癌におけるINSM1発現と予後との関連や、肺がん細胞株を用いてINSM1やその下流のシグナルとの関連性を評価し、機能解析も行った。
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