研究課題/領域番号 |
20K16384
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
皆川 光 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60792132)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん免疫 / WT1 / 経口ワクチン / 脳腫瘍 / 頭蓋内接種 / 放射線治療 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
抗腫瘍効果の実験として膠芽腫マウスモデルに対してWT1経口がんワクチンの投与を行い、生存率と腫瘍量変化を観察した。 WT1蛋白とルシフェラーゼを強制発現させた膠芽腫細胞株(GL261-WT1-Luc)をマウスの右視床に3×10^5 cells接種し生着させた(N=7)。このマウスに対して、血液脳関門を破壊する目的でday5に放射線照射2Gyを施行した。その後WT1経口がんワクチンを2.0x10^9 CFU/PBS 100uLで投薬を開始した。投薬は吸入麻酔下に経口ゾンデを用いて行い、強制的に内服させた。腫瘍量はXenogen IVISLumina II (IVIS)を用いて発光量として週1回評価をした。マウスが死亡するまで、あるいは動物愛護の観点から10%の体重減少が起こるまで観察し、必要な場合にはイソフルラン吸入の深麻酔にて安楽死させた。 その結果、生存率に関しては7匹中6匹が死亡し、1匹は腫瘍が治癒した。死亡したマウス(N=6)に関して、体重減少による安楽死はなく、生存期間の有意な改善を認めた。IVISによる腫瘍量の経時的変化に関しても、腫瘍量の増大速度が抑制される傾向が認められた。 また同実験において、マウスの末梢血を用いてCTL中のWT1特異的CTLの割合を検討したところ、WT1経口がんワクチン投与群においてその割合が増加した。このことは、投薬により腸管免疫を介して末梢血中のWT1特異的CTLが増えたことを意味しており、抗腫瘍効果の改善を示唆する一つの証拠となる。 今後は、同様のマウスモデルにおいて、腫瘍増大が抑制された個体に関して、腫瘍 内浸潤リンパ球(TIL)の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの個体数を増やしたことにより多量の経口ワクチンが必要となり、その培養に時間を要した。マウス末梢血検査についても個体数を増やして経時的に検討したため手間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
WT1経口がんワクチンによる抗腫瘍効果は認めるものの、差が小さいため有意差を出すのには個体数を多量に増やす必要がでてきた。今後は、さらなる抗腫瘍効果を求めて、個体数を増やすだけではなく、他の薬剤を併用することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸事情により半年間実験を行わない期間が生じたため、次年度に繰り越しを行い、引き続き実験を継続する予定である。
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