抗腫瘍効果の実験として膠芽腫マウスモデルに対してWT1経口がんワクチンの投与を行い、生存率と腫瘍量変化を観察した。 WT1蛋白とルシフェラーゼを強制発現させた膠芽腫細胞株(GL261-WT1-Luc)をマウスの右視床に3×10^5 cells接種し生着させた(N=7)。このマウスに対して、血液脳関門を破壊する目的でday5に放射線照射2Gyを施行した。その後WT1経口がんワクチンを2.0x10^9 CFU/PBS 100uLで投薬を開始した。投薬は吸入麻酔下に経口ゾンデを用いて行い、強制的に内服させた。腫瘍量はXenogen IVISLumina II (IVIS)を用いて発光量として週1回評価をした。マウスが死亡するまで、あるいは動物愛護の観点から10%の体重減少が起こるまで観察し、必要な場合にはイソフルラン吸入の深麻酔にて安楽死させた。 その結果、生存率に関しては7匹中6匹が死亡し、1匹は腫瘍が治癒した。死亡したマウス(N=6)に関して、体重減少による安楽死はなく、生存期間の有意な改 善を認めた。IVISによる腫瘍量の経時的変化に関しても、腫瘍量の増大速度が抑制される傾向が認められた。 また同実験において、マウスの末梢血を用いてCTL中のWT1特異的CTLの割合を検討したところ、WT1経口がんワクチン投与群においてその割合が増加した。このことは、投薬により腸管免疫を介して末梢血中のWT1特異的CTLが増えたことを意味しており、抗腫瘍効果の改善を示唆する一つの証拠となる。 最後に、同様のマウスモデルにおいて腫瘍増大が抑制された個体に関して、腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の検討を行った。放射線照射をしていない場合の経口ワクチン群(N=6)ではWT1特異的CTLの割合は約0.3%であった。放射線照射を併用することで約0.7%まで増加したが、目標としていた1-2%には届かなかった。
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