研究課題/領域番号 |
20K16385
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 拓也 大阪大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (40762076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | miRNA / エクソソーム / EGFR-TKI / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)は、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌に著効するが、1-2年で耐性を獲得し、再発、再増悪を来す。通常、薬剤耐性の診断には、癌組織生検が必要であり、患者負担を要する。そこで、liquid biopsyへの展開を見据え、薬剤耐性獲得後の腫瘍細胞由来エクソソームから薬効予測バイオマーカーを探索する目的で本研究を行った。昨年度、ヒトEGFR遺伝子変異陽性肺がん細胞株(PC9)に対して第三世代EGFR-TKIであるオシメルチニブに耐性を獲得した耐性細胞株(PC9OR)由来のエクソソームが、オシメルチニブ耐性を誘導する機能を有していることを示した。今年度は、PC9OR由来のエクソソームから抽出したmiRNAが、PC9のオシメルチニブ感受性に影響を与えることを明らかにした。さらに、PC9およびPC9ORのエクソソーム由来miRNAについてマイクロアレイ解析とqPCR解析にて、PC9に比してPC9ORに有意な発現増加を認める6つのmiRNA(miR-18a-5p、miR-20b-5p、miR-130a-3p、miR-378a-3p、miR-378f、miR-424-3p)を同定した。これら6つのmiRNAは、別のヒトEGFR遺伝子変異陽性肺がん細胞株(H1975、HCC827)より樹立したオシメルチニブ耐性細胞株(H1975OR、HCC827OR)においても発現増加を認めた。これらのmiRNAのターゲット遺伝子群に対してパスウェイ解析を行ったところ、FoxO、Ras、MAPK、AMPKシグナルといったEGFR-TKI耐性獲得に深く関わるシグナルへ影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同定した6つのmiRNAからバイオマーカー候補を絞り込むことに時間を要したが、現在これらの中でも一つのmiRNAについてオシメルチニブ耐性化への寄与を示唆するデータが出てきており、次年度は臨床検体を含めたさらに詳細な解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマーカー候補となるmiRNAについて、mimicとinhibitorをそれぞれ用いて、オシメルチニブ感受性に対する影響について検証を行う。また、ルシフェラーゼレポーターアッセイにて、候補miRNAの作用遺伝子に対する機能を確認し、western blot法にて薬剤耐性に関わるシグナルの変動を検証することで、より詳細な機能解析を行う。さらに、ヒトの血液サンプルを用いて、オシメルチニブ使用前後の血中候補miRNAの発現量の変動及び血中miRNAの発現量の差がオシメルチニブ使用後の無増悪生存期間、生存期間に与える影響について検討を行い、候補miRNAのバイオマーカーとしての有効性を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオマーカー候補を絞り込む際のバイオインフォマティクス解析に時間を要し、試薬等の消費が進まなかった。次年度は、miRNAのmimicとinhibitorを用いたin vitro解析および臨床検体を用いた評価を進めるために、実験に必要な試薬等の購入に使用する予定である。
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